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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…私たち、可笑しいわね…」

紫織が眼を細め微笑み、紗耶を優しく見上げた。

「…同じひとに恋をして、同じように置き去りにされて…」

紗耶も苦笑する。
「ええ…。そうね…」

「…ねえ、紗耶ちゃん…」
紫織の白く細い指先が紗耶の髪をさらりと撫でる。

「なあに?お母様」

「…藤木先生の…どこに恋したの?」

その言葉に紗耶は眼を見張る。

…そうして、長い睫毛を瞬かせると、その姿と薫りを思い起こすかのように、窓越しに遠くを見つめた。

「…そうね…。
…あの宝石のような美しい榛色の瞳と…」

その言葉の続きを引き取るかのように…

「…深い深い森に咲く百合と、ひんやりしたモッシーの薫り…」

紫織が唄うように言った。

「…お母様…」

二人は瞳を合わせ、少し切なげに…微かに共犯者めいた色を滲ませ微笑んだ。

紫織が紗耶をそっと抱きしめた。

「…私はできなかったけれど…貴女は先生を捕まえて…」

「…お母様…!」
…紫織のダマスクスローズの薫り…。

その薫りはかつての恋の残り香のように、静かに揺めき、紗耶に優しく纏わりついた…。


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