この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

「…私たち、可笑しいわね…」
紫織が眼を細め微笑み、紗耶を優しく見上げた。
「…同じひとに恋をして、同じように置き去りにされて…」
紗耶も苦笑する。
「ええ…。そうね…」
「…ねえ、紗耶ちゃん…」
紫織の白く細い指先が紗耶の髪をさらりと撫でる。
「なあに?お母様」
「…藤木先生の…どこに恋したの?」
その言葉に紗耶は眼を見張る。
…そうして、長い睫毛を瞬かせると、その姿と薫りを思い起こすかのように、窓越しに遠くを見つめた。
「…そうね…。
…あの宝石のような美しい榛色の瞳と…」
その言葉の続きを引き取るかのように…
「…深い深い森に咲く百合と、ひんやりしたモッシーの薫り…」
紫織が唄うように言った。
「…お母様…」
二人は瞳を合わせ、少し切なげに…微かに共犯者めいた色を滲ませ微笑んだ。
紫織が紗耶をそっと抱きしめた。
「…私はできなかったけれど…貴女は先生を捕まえて…」
「…お母様…!」
…紫織のダマスクスローズの薫り…。
その薫りはかつての恋の残り香のように、静かに揺めき、紗耶に優しく纏わりついた…。
紫織が眼を細め微笑み、紗耶を優しく見上げた。
「…同じひとに恋をして、同じように置き去りにされて…」
紗耶も苦笑する。
「ええ…。そうね…」
「…ねえ、紗耶ちゃん…」
紫織の白く細い指先が紗耶の髪をさらりと撫でる。
「なあに?お母様」
「…藤木先生の…どこに恋したの?」
その言葉に紗耶は眼を見張る。
…そうして、長い睫毛を瞬かせると、その姿と薫りを思い起こすかのように、窓越しに遠くを見つめた。
「…そうね…。
…あの宝石のような美しい榛色の瞳と…」
その言葉の続きを引き取るかのように…
「…深い深い森に咲く百合と、ひんやりしたモッシーの薫り…」
紫織が唄うように言った。
「…お母様…」
二人は瞳を合わせ、少し切なげに…微かに共犯者めいた色を滲ませ微笑んだ。
紫織が紗耶をそっと抱きしめた。
「…私はできなかったけれど…貴女は先生を捕まえて…」
「…お母様…!」
…紫織のダマスクスローズの薫り…。
その薫りはかつての恋の残り香のように、静かに揺めき、紗耶に優しく纏わりついた…。

