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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

…そうして日々は瞬く間に過ぎていった。
永遠に続くかと思われた長い寒い冬が漸く過ぎ去り、いつのまにか匂いやかな白梅が咲き、桜の開花宣言がニュースになる頃、紗耶は2年生に進級した。
…そんな麗らかな春のある日、紫織は元気な男児を出産した。
政彦からの連絡を受けた紗耶は、急いで入院している産院に向かった。
「お母様は今、健診中ですから、先に赤ちゃんにご対面されたらいかがですか?
弟さんは新生児室でねんねしていますよ」
部屋を尋ねたナースステーションで、気の利いたナース長にアドバイスされ、迅る気持ちを抑えながら長い廊下を小走りで走る。
「…新生児室…新生児室…あった…!」
…廊下に面したガラス張りの広い部屋…。
室内には透明なベビーベッドに寝かせられたたくさんの新生児が並んでいた。
近づこうとして
「…あ…」
紗耶は思わず声を上げた。
新生児室の硝子窓の前、すらりと美しい長身の後ろ姿の若い男性が佇んでいた。
…男は紗耶の気配にゆっくりと振り返る。
「…久しぶりだね。
紗耶ちゃん…」
鳶色の美しい瞳が紗耶を見つめ、優しく微笑んだ。
「…千晴お兄ちゃま…」
永遠に続くかと思われた長い寒い冬が漸く過ぎ去り、いつのまにか匂いやかな白梅が咲き、桜の開花宣言がニュースになる頃、紗耶は2年生に進級した。
…そんな麗らかな春のある日、紫織は元気な男児を出産した。
政彦からの連絡を受けた紗耶は、急いで入院している産院に向かった。
「お母様は今、健診中ですから、先に赤ちゃんにご対面されたらいかがですか?
弟さんは新生児室でねんねしていますよ」
部屋を尋ねたナースステーションで、気の利いたナース長にアドバイスされ、迅る気持ちを抑えながら長い廊下を小走りで走る。
「…新生児室…新生児室…あった…!」
…廊下に面したガラス張りの広い部屋…。
室内には透明なベビーベッドに寝かせられたたくさんの新生児が並んでいた。
近づこうとして
「…あ…」
紗耶は思わず声を上げた。
新生児室の硝子窓の前、すらりと美しい長身の後ろ姿の若い男性が佇んでいた。
…男は紗耶の気配にゆっくりと振り返る。
「…久しぶりだね。
紗耶ちゃん…」
鳶色の美しい瞳が紗耶を見つめ、優しく微笑んだ。
「…千晴お兄ちゃま…」

