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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…本当に紫織さんにそっくりですね」

改めて病室で赤ん坊を抱いた紫織との対面を果たしながら、千晴は声を弾ませた。

「…透き通るように色が白くて、赤ちゃんなのにとても整った貌をしている…。
本当に綺麗な赤ちゃんですね…。
あ、眼を開けた…!
やっぱり紫織さんにそっくりだ…!」

無邪気に喜ぶ姿はまるで少年のようだ。

「…言っておくがな、僕の子どもでもあることを忘れるなよ、千晴」
忙しい仕事を抜け出し面会に来た政彦が、苦虫を噛み潰したような表情で釘を刺した。

紗耶と紫織は眼を見合わせて微笑んだ。

千晴が二宮家の新しい命の誕生を心から喜んでくれているのが、素直に嬉しい。
そうして、密かに思う。

…千晴お兄ちゃまは、やっぱりお母様に夢中なのだわ…。

けれどそれは、今となっては良かったと思う。
千晴には紫織がいる。
…もちろん紫織は政彦の妻だから、二人が結ばれることはない。
けれどきっと、紫織は千晴の気持ちをあるがままに受け止めるだろうと思うのだ。
そして、そのことを二人は密かに分かり合っている。

…決して結ばれはしないけれど、お互いの気持ちを分かり合い、心だけそっと寄り添う愛…。
そんな愛があっても良いのだと、紗耶は漸く判るようになったのだ。

…私も、先生に逢えなくてもいい。
ただ、先生が元気でいて、私のことをどう思っているのかだけ、知りたい。
そうして、私がどんなに先生を愛しているかを伝えたい。

…それだけなのに…。
…先生は…今、どこに…。

物想いに耽る紗耶に、紫織が遠慮勝ちに声をかける。

「…紗耶ちゃん…」

紗耶は慌てて首を振り、明るく笑みを作った。

「おめでとう。お母様。
本当に綺麗な赤ちゃんだわ。
こんなに可愛い弟ができて、私嬉しいわ」

紫織が眼を潤ませて、長い睫毛を瞬いた。

「…ありがとう。紗耶ちゃん…。
ねえ、赤ちゃんを抱っこしてくれる…?」

紗耶は眼を見張った。

「いいの?お母様…」

「もちろんよ。
抱いてあげてちょうだい」

白いおくるみに包まれた赤ん坊が、そっと差し出された。






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