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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
千晴の愛車の助手席は久しぶりだ。
埃ひとつ、染みひとつなく磨き上げられた美しい深い深い海の色のドイツ車…。

高遠家にはもちろん専属の運転手がいたが、公的な外出以外は千晴は必ず自分の愛車のハンドルを握っていた。
…世の他の男性と同じく、千晴もかなりの車好きだからだ。

滑らかにハンドルを操りながら、千晴は静かに口を開いた。
愛用のゲランの夜間飛行が微かに薫る。

「…彼は見つかった?」
端的な質問に、思わず紗耶は千晴を見上げる。

端麗で華やかな…ギリシャ彫刻の彫像のような横貌を見せながら、千晴は薄く微笑んだ。

「藤木芳人さん。
紗耶ちゃんの想い人。
…もう見つかったの?」

千晴のなんの邪気もない穏やかな表情と言葉に安心しながら、紗耶はやや俯いて首を振った。

「…いいえ…。
色々な手を尽くして探しているんですけれど…全然見つからないの…」

紗耶は自分の言葉に改めて落胆しながら、密かにため息を吐いた。

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