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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
…それは紛れもない事実だった。
紗耶はできる限りの手を尽くした。
まず、藤木が在籍していたコロンビア大学の研究室宛てに英文でメールを送った。
藤木がまた研究室に戻っているのではないかと思ったのだ。
…けれど大学と研究室からの回答は
『プロフェッサー・フジキは当大学には在籍していない』
とのあっさりとしたものだった。
日本に残り上智大学に留学している藤木の息子にも連絡した。
『悪いけど、俺もパパの行き先は知らないんだ』
…上智大学のカフェテリア…紗耶の前に座った藤木紫音は、肩を竦め淡々と答えた。
ふわふわの亜麻色の髪にざっくりした派手な色のビッグシルエットのシャツを着ているが、すっかりこちらの大学や生活に慣れているようで、のんびりした落ち着きを醸し出していた。
友人も出来たようで、時折、すれ違う学生から声を掛けられている。
…なかなかに人気者らしい…。
『ママのところにも何の連絡もないみたい。
…あ、俺の養育費はきちんと振り込まれているらしいよ。
パパらしいや』
そう言って、紫音はくすりと笑った。
『…そう…ですか…』
がっかりして肩を落とす紗耶を、紫音は優しげな眼差しで見つめた。
『ねえ…』
…榛色の瞳…。
藤木によく似ていて、懐かしさに紗耶の胸がきゅっと締め付けられた。
『…あんた、まだパパを探してんの?』
『はい…』
『あんた、家を出たんだろう?
勘当されたんだって?
…パパも見つからなくてさ…どうすんの?これから…』
『私…』
口唇を開く前に、紫音が手を挙げた。
『あんたがパパを愛していることは分かってる。
…パパもあんたを愛している。
だから、あんたを置いていなくなったんだよ。
あんたの綺麗な人生を台無しにしたくなかったんだよ。
…そう言う愛もあるんじゃないの?』
…俺にはよく分からないけどね…。
そう付け加え、紫音はアイスコーヒーをぐびりと飲んだ。
紗耶はできる限りの手を尽くした。
まず、藤木が在籍していたコロンビア大学の研究室宛てに英文でメールを送った。
藤木がまた研究室に戻っているのではないかと思ったのだ。
…けれど大学と研究室からの回答は
『プロフェッサー・フジキは当大学には在籍していない』
とのあっさりとしたものだった。
日本に残り上智大学に留学している藤木の息子にも連絡した。
『悪いけど、俺もパパの行き先は知らないんだ』
…上智大学のカフェテリア…紗耶の前に座った藤木紫音は、肩を竦め淡々と答えた。
ふわふわの亜麻色の髪にざっくりした派手な色のビッグシルエットのシャツを着ているが、すっかりこちらの大学や生活に慣れているようで、のんびりした落ち着きを醸し出していた。
友人も出来たようで、時折、すれ違う学生から声を掛けられている。
…なかなかに人気者らしい…。
『ママのところにも何の連絡もないみたい。
…あ、俺の養育費はきちんと振り込まれているらしいよ。
パパらしいや』
そう言って、紫音はくすりと笑った。
『…そう…ですか…』
がっかりして肩を落とす紗耶を、紫音は優しげな眼差しで見つめた。
『ねえ…』
…榛色の瞳…。
藤木によく似ていて、懐かしさに紗耶の胸がきゅっと締め付けられた。
『…あんた、まだパパを探してんの?』
『はい…』
『あんた、家を出たんだろう?
勘当されたんだって?
…パパも見つからなくてさ…どうすんの?これから…』
『私…』
口唇を開く前に、紫音が手を挙げた。
『あんたがパパを愛していることは分かってる。
…パパもあんたを愛している。
だから、あんたを置いていなくなったんだよ。
あんたの綺麗な人生を台無しにしたくなかったんだよ。
…そう言う愛もあるんじゃないの?』
…俺にはよく分からないけどね…。
そう付け加え、紫音はアイスコーヒーをぐびりと飲んだ。