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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
紗耶はぽつりと呟いた。

『…私…先生とどうこうなりたいと思っているわけではありません…』

『へえ?』
意外そうに、紫音が形の良い眉を跳ね上げた。

『じゃあ、サーヤちゃんはどうしたいの?パパと』

紗耶は白い手をぎゅっと握りしめる。

『…逢いたいんです。
ただ、先生に逢いたい。
…私の時間は…あの夜で止まってしまっているから。
先生が私を置いてどこかに行ってしまったあの夜で…時計の針は止まっているんです。
だから、先生に逢いたい。
…ただ、先生に逢いたい。
逢って、声が聴きたい。
その綺麗な瞳を見つめたい…』

…それ以外は、何もいらない…。

握りしめた白い手の甲に、ぽつんと雨粒のような透明な涙が滴り落ちた。

…しばらくの沈黙ののち、小さなため息が聞こえた。

『…分かったよ』

藤木に良く似た色素の薄い美しい瞳が、優しい形に細められた。

紫音は紗耶の頭をわざとくしゃくしゃと無造作に撫でた。

『…パパのこと、何か分かったら必ず知らせる』


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