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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…そう…。
実の息子さんでも消息は分からないんだね…」

話を聞き終わった千晴が静かに告げた。

「…はい」

…紫音ですら藤木の所在が分からないなら、探すことは相当困難に思えた。
恐らくはもう日本にはいないのだろう。

思えば、紗耶は藤木のことは殆ど何も知らないのだ。
その男を探すこと…。
それは雲を掴むような話なのだ。

肩を落とす紗耶を黙って見遣ると、千晴は車を巧みに道幅に寄せた。

…アネゴの家は目と鼻の先だ。
家の門柱に早めの外灯りが灯っている。

「…紗耶ちゃん」

「はい…」

千晴が仕立ての良い春物のジャケットの内ポケットから、白い封筒をしなやかに取り出した。

「…これを君に…」
紗耶にそっと差し出した。

「…千晴お兄ちゃま…?」
不思議そうに見上げる紗耶と、眼が合う。

美しい鳶色の瞳が、真っ直ぐな眼差しで紗耶を見下ろしていた。

「…彼の居場所が分かったよ…」


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