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第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ

紗耶は思わず息を呑んだ。
「…え…⁈」

「家で雇用している探偵に調べさせた。
…少し時間がかかったけれどね。
漸く分かったよ。
…だから、これを君に…」

「…千晴お兄ちゃま…」
差し出された白い封筒と千晴を、じっと見つめた。

「…お兄ちゃま…どうして…？」
…私はお兄ちゃまを裏切ったのに…。
裏切って、お兄ちゃまの貌に泥を塗ったのに…。

震える声で、己れの心の内を噛み締めながら、告げる。

「…どうしてそんなに優しくしてくださるの…？
紗耶は…千晴お兄ちゃまを裏切ったのよ…。
お兄ちゃまを悲しませ、迷惑をたくさん掛けたわ…。
いくら憎まれでも、軽蔑されてもしかたないことを私はしたのよ。
それなのに…そんな私に…」

千晴の長くしなやかな指が、紗耶の口唇を封印するかのようにそっと触れる。

「…紗耶ちゃんが今も大好きだからさ」

「千晴お兄ちゃま…！」

優しい鳶色の瞳がふわりと微笑んだ。

「紗耶ちゃんには幸せになって欲しい。
…僕がその役目を果たせなくてもね…。
寂しそうな紗耶ちゃんは見たくないんだよ。
紗耶ちゃんにはいつも笑っていて欲しい」

…そして…

千晴の手が紗耶の手を取り、封筒を握らせる。

「…僕の最愛のプリンセスには、幸せになって欲しい…」