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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…て、言ってもなあ…。
これでも毎日必死で探してるんだけどなあ…。
本当に…先生、どこにいるのかしら…」

紗耶は居間のパソコンの前でため息を吐いた。

…毎日毎日、手がかりになりそうなニュースやワードはないかとネットサーフィンするのが、紗耶の日常となっていた。
香料の研究室、香料を扱う会社、メーカー、小売店までも手を広げた。
日本はもちろん、アジア、アメリカ、ヨーロッパにも…。
…なんとなく、藤木は日本にはいないような気がしたからだ。

少しでも、藤木を彷彿させる人物が記載された記事やブログがあれば、英文でメールを送った。

…けれど、探せども探せども藤木に繋がる情報は皆無だった。

紗耶は幾度目かのため息を吐く。

「サ〜ヤ〜。
そ〜んなに苦労してんなら、お兄ちゃまからの情報、しれっとまるっといただいちゃえば良かったのにい〜」
アネゴがひょいと貌を覗かせた。

「アネゴ先輩!
お帰りなさい」
慌ててパソコンを閉じようとする紗耶を優しく押し留め、隣の椅子にどさりと座る。

「お兄ちゃま、藤木先生の居所突き止めたんでしょ?
もったいないなあ。情報、断っちゃってさあ」

紗耶は苦笑いしながら、アネゴにお茶を淹れるためにキッチンに立った。

「…いいんです。
だって、お兄ちゃまの力で先生に逢えても、それでは意味がないんです。
私が自力で先生を捕まえなきゃ、駄目なんです。
そうでないと、先生の前に堂々と立てない気がして…」

差し出された薫り高いダージリンを受け取りながら、アネゴは首を振った。
「ふうん…。そんなもんかねえ。
…ま、サーヤがそう言うならいいけどさあ」

…でも…
と、アネゴは真顔で紗耶を見つめた。

「…サーヤのそ〜ゆ〜頑固なとこ、嫌いじゃないよ」

そうして、美味しそうにお茶を飲むと、今度はにやりと笑ってみせた。

「…早く捕まえられるといいね。
あんたのトウの立った王子様」





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