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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
…そうして、月日は瞬く間に過ぎて行った。
相変わらず、藤木に関する情報は何も得られないままだった。
もはや、彼は本当に存在していたのだろうかと不安になるほどに、その消息は杳として知れずであった。

…紗耶は四年生になった。

同級生はとっくに就職を決めていたが、紗耶は就職活動すらする気になれなかった。
紗耶の切なる願いは、藤木を探し出すことだったからだ。

「まあ、いいじゃん。塾の講師をしながら、先生探しをライフワークにしなよ。塾長も喜ぶよ」
アネゴは朗らかに励ましてくれた。

…そのアネゴはこの春、生家の寺を継ぐ為に、京都嵯峨野の尼寺に修行に赴くことになっていた。

「寂聴センセのとこじゃないけどね。
親父さんの懇意にしているお寺さんなんだ。
明るくておおらかで、馬が合いそうな院主さんなんだよね」
アネゴはうきうきと楽しそうだった。

…それはアネゴたちの卒業式の夜のことだった。
電撃とも言うべきそのニュースを、紗耶はアネゴの口から聞かされることとなったのだ。

「あ、サーヤ。あたしさ、隼人と入籍したから」

…まるで、ちょっとした買い物の報告のような気軽さで、その驚くべき事実を切り出されたのだ。

「…入籍…ですか…」

紗耶は一瞬全く意味が分からず、暫くしてようやく…

「え、え〜ッ!?」

腰をぬかさんばかりに驚いたのだった。
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