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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「披露宴でバイオリンを演奏してるの、紗耶ちゃん?」
きぬ子が動画を見ながら目を丸くした。

「…はい…。
僭越ながら、結婚行進曲を弾かせていただきました」

…山奥ゆえ、近くのパーティ会場に場所を移し…という訳にもいかず、披露宴は寺に隣接したアネゴの自宅で行われた。
…襖を取り払えば五十畳はあろうかという広い広間に両家の親戚一同、アネゴの幼なじみや友人、そして隼人の友人たち、サークル仲間と賑やかに集まり、呑んで歌っての笑いの絶えない宴会となった。

『まずサーヤが厳かにクラシック演奏して。
じゃないとグダグダの訳わからん飲み会になっちゃうからさ』
アネゴに頼まれ、紗耶は入場曲として結婚行進曲を演奏した。

…純白のウェディングドレス身に纏ったアネゴは、しっとりと女性らしく本当に綺麗だった。

感激屋の隼人はアネゴの姿を見るなり、涙ぐみ
『バカだね。男が泣いてど〜すんだよ。
あんたが嫁に行くわけでもないのにさ』
とアネゴにハンカチでハナを拭かれていた。

…そのあとは隼人がギターを、アネゴが津軽三味線を掻き鳴らし、オアシスとクイーンを弾きまくり、水炊き屋の女将、隼人の母親と住職のアネゴの父親がなぜか銀恋をデュエットするというカオスな場面が展開されたのだ。

…なるほど、最初に結婚行進曲を弾いておいて良かった…と、紗耶はしみじみ思ったものだ。

「ああ、可笑しい…!こんな面白い披露宴は初めて見たわ!』
動画を見ていたきぬ子が笑い泣きしながら、レースのハンカチを取り出し、目頭を押さえた。

…その時、開かれた窓から初夏の風がざあっと吹き込み、きぬ子の手からハンカチが攫われた。
それはふわりと紗耶の膝の上に舞い落ちた。

素早く拾い、きぬ子に返そうとして…

…懐かしい薫りの記憶が奇跡のように甦った。

「…!!
…こ、この…薫り…!」
紗耶は愕然として、ハンカチを握りしめた。

きぬ子が不思議そうに紗耶を見上げた。
「どうしたの?紗耶ちゃん?」

紗耶は震える声で、必死に尋ねた。

「…き、きぬ子さん…!
この…ハンカチの…香水…この香水は…どちらで…?」

…この薫り…。
間違いないわ…!

…深い深い森に咲く百合と、ひんやりとしたモッシーの薫り…
そして、薔薇とカーネーション…!

…この薫りは…!

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