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異邦人の庭 〜secret garden〜
第15章 カーネーション・リリー・リリー・ローズ
「…ああ、この香水?
良い薫りでしょう?
これは頂いたのよ。お友だちに」
きぬ子がのんびりと答えながら、よいしょ…とソファから立ち上がる。

「寝室に置いてあるの」
ゆっくり廊下を歩くきぬ子を、いささかお行儀が悪いと自分でも思うほど、急かすように横を歩く。
「お友だちですか?
どなたですか?」

「フラワーアレンジメント教室のお友だちよ。
彼女は大変な香水マニアでね。
わざわざ新しい香水を目当てに世界中を旅するほどなの」

「世界中…。
で、これはどちらで手に入れられたのですか?」
はやる気持ちを抑えながら、尋ねる。
…この薫り…この薫りは…

きぬ子は生真面目にこめかみに指を当てて、考え込む。
「…ええと…どこって言っていたかしら…。
…ああ、そうだ。思い出した。
…ニースよ。南フランスのニース」

「…ニース…」

のんびりした性格のきぬ子は、紗耶の様子に気づくことなく寝室のドレッサーの前にゆっくり座った。
そうしてがさごそと、引き出しの中の香水を探し始める。

「…ええと…どれだったかしら…。
…そうそう、確かこれよ」

…はい。と、きぬ子が差し出したそれは、細長い小さな試験管のような無機質な硝子の瓶だ。
量は僅か2mlくらいだろうか…。
いわゆる香水のサンプル品によくあるタイプだ。
特に何も書かれてはいない無地の硝子瓶。

震える手で受け取る。
「…嗅いでも…良いですか?」

「ええ、もちろん。
…本当に良い薫りなのよ。
私もあまりに素晴らしい薫りで感激して、彼女に無理言って少しだけ分けていただいたの。
…彼女が言うには、その調香師の方は日本人の男性でね。
大層ハンサムな方だったのですって。
…なんでも以前はアメリカの大学の研究室で香料の研究をしていたのだそうよ」

…朗らかに語られるきぬ子の言葉は、あまりに夢のようで俄かに現実とは思えないほどだった。

…だから紗耶は、緊張のため冷たく強ばる指で、香水瓶の蓋をゆっくりと開けた…。

…ただひとつの真実を、確かめるために…。
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