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異邦人の庭 〜secret garden〜
第16章 異邦人の庭 〜secret rose garden〜
紗耶が婚約破棄してから、千晴には決まった恋人はいない。
もちろん千晴に熱烈に恋をしている一族の娘はたくさんいる。
けれど、千晴はどの娘にも興味を持たなかった。
溺愛しているのは…
理人だけだ。
「…紗耶がしでかしたことは今も申し訳なく思っている…。
けれどあれからもう三年経ったのだ。
紗耶のことは忘れて、早く良いひとを見つけて欲しいのだよ。
…そうして、高遠家に相応しい御台所を迎えて…」
「理人、カエルさんをお池に帰してあげなさい。
また会えるからね」
さりげなく政彦の言葉を遮り、理人を促す。
「うん!じゃあ、千晴お兄ちゃま、約束だよ!
一緒にテントにお泊まりするの」
「もちろんだ」
理人が紫織のシフォンのスカートを引っ張る。
「ねえ、おかあちゃまもいっしょに泊まろうよ」
「それは素晴らしいアイデアだね。
紫織さん、ご一緒に泊まりませんか?」
甘やかな眼差しで紫織を見つめる千晴に、政彦がむっとしたように眉を顰めた。
「千晴…!」
乳母と一緒に軽やかに中庭に戻ってゆく理人を愛おしげに見送りながら、千晴は小さく笑った。
「冗談ですよ」
…それから…と、悪戯めいた鳶色の瞳が政彦を見上げた。
「僕はまだ紗耶ちゃんを諦めたわけではありませんからね。
政彦兄さん」
もちろん千晴に熱烈に恋をしている一族の娘はたくさんいる。
けれど、千晴はどの娘にも興味を持たなかった。
溺愛しているのは…
理人だけだ。
「…紗耶がしでかしたことは今も申し訳なく思っている…。
けれどあれからもう三年経ったのだ。
紗耶のことは忘れて、早く良いひとを見つけて欲しいのだよ。
…そうして、高遠家に相応しい御台所を迎えて…」
「理人、カエルさんをお池に帰してあげなさい。
また会えるからね」
さりげなく政彦の言葉を遮り、理人を促す。
「うん!じゃあ、千晴お兄ちゃま、約束だよ!
一緒にテントにお泊まりするの」
「もちろんだ」
理人が紫織のシフォンのスカートを引っ張る。
「ねえ、おかあちゃまもいっしょに泊まろうよ」
「それは素晴らしいアイデアだね。
紫織さん、ご一緒に泊まりませんか?」
甘やかな眼差しで紫織を見つめる千晴に、政彦がむっとしたように眉を顰めた。
「千晴…!」
乳母と一緒に軽やかに中庭に戻ってゆく理人を愛おしげに見送りながら、千晴は小さく笑った。
「冗談ですよ」
…それから…と、悪戯めいた鳶色の瞳が政彦を見上げた。
「僕はまだ紗耶ちゃんを諦めたわけではありませんからね。
政彦兄さん」