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異邦人の庭 〜secret garden〜
第16章 異邦人の庭 〜secret rose garden〜
政彦はぎょっとしたように、眼を見張った。
「千晴。何を馬鹿なことを言っている。
理人は僕たちの大切な息子だ。
二宮家の大切な後継だ。
養子になど出すわけがないだろう」
…紫織、君からも…と促され、紫織は困惑したように小さく微笑んだ。
そうして、怒ると言うより、母親のように優しく諌めた。
「困りますわ、千晴さん。
理人はようやく授かった男の子ですのよ。
紗耶がフランスに行ってしまって、私たちには理人しか残っていないのです。大切な子どもなのです。
貴方もそのことはご承知ですわね?」
「ああ、もちろんです。
紫織さん。
貴女を悲しませるつもりは毛頭ないのです」
千晴は悪戯を見つかった子どものように端正な眉を下げた。
そうして紫織の白絹のような手を、しなやかな所作で押し懐くように握り締めた。
「…理人を僕の養子に…いや、高遠本家の後継者にしたいくらい愛おしく大切に思っていると申し上げたかっただけなのです。
…何しろ理人は貴女のお子ですからね…」
…甘く囁くように微笑み、恭しく紫織の白い手に口づけをした。
それはさながら、中世の騎士が敬愛する王妃に愛と忠誠を誓うような仕草だった。
「…本当に困ったお方だわ…」
紫織は薄く微笑み、千晴を睨むように見上げた。
…幽かに…妖しく甘い蜜のような空気が二人の間に流れた…。
「千晴。何を馬鹿なことを言っている。
理人は僕たちの大切な息子だ。
二宮家の大切な後継だ。
養子になど出すわけがないだろう」
…紫織、君からも…と促され、紫織は困惑したように小さく微笑んだ。
そうして、怒ると言うより、母親のように優しく諌めた。
「困りますわ、千晴さん。
理人はようやく授かった男の子ですのよ。
紗耶がフランスに行ってしまって、私たちには理人しか残っていないのです。大切な子どもなのです。
貴方もそのことはご承知ですわね?」
「ああ、もちろんです。
紫織さん。
貴女を悲しませるつもりは毛頭ないのです」
千晴は悪戯を見つかった子どものように端正な眉を下げた。
そうして紫織の白絹のような手を、しなやかな所作で押し懐くように握り締めた。
「…理人を僕の養子に…いや、高遠本家の後継者にしたいくらい愛おしく大切に思っていると申し上げたかっただけなのです。
…何しろ理人は貴女のお子ですからね…」
…甘く囁くように微笑み、恭しく紫織の白い手に口づけをした。
それはさながら、中世の騎士が敬愛する王妃に愛と忠誠を誓うような仕草だった。
「…本当に困ったお方だわ…」
紫織は薄く微笑み、千晴を睨むように見上げた。
…幽かに…妖しく甘い蜜のような空気が二人の間に流れた…。