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異邦人の庭 〜secret garden〜
第4章 ミス・アリスと午後のお茶を…
「紗耶嬢ちゃん、ほら!見てくだせえ。
ミス・アリスがたくさん蕾を付けてますぜ。
…今年は成長が早いですよ」
庭師の森野が紗耶を呼ぶ。
「わあ…!本当だ。可愛い…!
私、ミス・アリスを育てるの、初めて。
ねえ、森野さん、ミス・アリスって育てるの、難しい?
どんなお花?どんな薫り?」
紗耶は眼を輝かせながら森野に尋ねる。
…高遠家の四月の薔薇園はまさにこれから咲こうとする可愛らしい蕾を備えた多種類な薔薇が眼にも鮮やかに広がり、豊かで手入れされたグリーンや様々なプランツとともにため息が出るほどに美しい光景であった。
「…そうさなあ…。ミス・アリスは可愛い見かけと違って大層丈夫さね。
うどん粉病や黒星病に気をつけたらあとは低農薬を使って月に一度撒くくらいさね。
丈が低めだから、花壇の前にぴったりさ。
…花の色は…」
森野が言いかけた時…
「…花色は最初はソフトピンク。
花が咲き進むと弁端からペールピンクに変わり、やがて全体が同じ花色になるんだよ。
…薫りは仄かに百合に似ている。
可愛らしくも床しいオールドローズの薫りだ…」
大輪のピエール・ドゥ・ロンサールのアーチの下、千晴が現れた。
…千晴は生成りのざっくりしたシャツにベージュのチノパンツというラフな姿だ。
まだ大学の授業が始まらないので、今日は自宅で仕事をするのだろう。
「千晴お兄ちゃま…!」
「これはこれは若様…。おはようごぜえます」
にこにこと頭を下げる森野に
「森野さん、紗耶ちゃんに薔薇の説明をするお株を僕から奪わないでくれよ」
「あはは!
若様もやっぱり男だねえ。
紗耶嬢ちゃんにイイところを見せてえんですね?」
「その通りさ」
千晴は陽気に笑った。
…そうして…
「おはよう、紗耶ちゃん。探したよ。
…良かった…。
…どこかに行ってしまったのかと思った…」
安堵したように薄く微笑まれ、紗耶の胸は甘く締め付けられる。
「…森野さんに薔薇の手入れの仕方を教わっていたの」
答える紗耶の頭に、鍔の広い白いストローハットを優しく被せる。
「四月の陽射しは意外に強いよ。日射病にならないようにね」
…それから…
と、紗耶の柔らかな頰に指先だけでおずおずと触れる。
「…綺麗な白い肌を焼かないように…」
そうして…
「…朝食にしよう。今日は天気がいいから、パーゴラの下で摂ろう」
と、極上の笑みを浮かべたのだった。
ミス・アリスがたくさん蕾を付けてますぜ。
…今年は成長が早いですよ」
庭師の森野が紗耶を呼ぶ。
「わあ…!本当だ。可愛い…!
私、ミス・アリスを育てるの、初めて。
ねえ、森野さん、ミス・アリスって育てるの、難しい?
どんなお花?どんな薫り?」
紗耶は眼を輝かせながら森野に尋ねる。
…高遠家の四月の薔薇園はまさにこれから咲こうとする可愛らしい蕾を備えた多種類な薔薇が眼にも鮮やかに広がり、豊かで手入れされたグリーンや様々なプランツとともにため息が出るほどに美しい光景であった。
「…そうさなあ…。ミス・アリスは可愛い見かけと違って大層丈夫さね。
うどん粉病や黒星病に気をつけたらあとは低農薬を使って月に一度撒くくらいさね。
丈が低めだから、花壇の前にぴったりさ。
…花の色は…」
森野が言いかけた時…
「…花色は最初はソフトピンク。
花が咲き進むと弁端からペールピンクに変わり、やがて全体が同じ花色になるんだよ。
…薫りは仄かに百合に似ている。
可愛らしくも床しいオールドローズの薫りだ…」
大輪のピエール・ドゥ・ロンサールのアーチの下、千晴が現れた。
…千晴は生成りのざっくりしたシャツにベージュのチノパンツというラフな姿だ。
まだ大学の授業が始まらないので、今日は自宅で仕事をするのだろう。
「千晴お兄ちゃま…!」
「これはこれは若様…。おはようごぜえます」
にこにこと頭を下げる森野に
「森野さん、紗耶ちゃんに薔薇の説明をするお株を僕から奪わないでくれよ」
「あはは!
若様もやっぱり男だねえ。
紗耶嬢ちゃんにイイところを見せてえんですね?」
「その通りさ」
千晴は陽気に笑った。
…そうして…
「おはよう、紗耶ちゃん。探したよ。
…良かった…。
…どこかに行ってしまったのかと思った…」
安堵したように薄く微笑まれ、紗耶の胸は甘く締め付けられる。
「…森野さんに薔薇の手入れの仕方を教わっていたの」
答える紗耶の頭に、鍔の広い白いストローハットを優しく被せる。
「四月の陽射しは意外に強いよ。日射病にならないようにね」
…それから…
と、紗耶の柔らかな頰に指先だけでおずおずと触れる。
「…綺麗な白い肌を焼かないように…」
そうして…
「…朝食にしよう。今日は天気がいいから、パーゴラの下で摂ろう」
と、極上の笑みを浮かべたのだった。