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異邦人の庭 〜secret garden〜
第4章 ミス・アリスと午後のお茶を…
…パーゴラ…蔓薔薇で出来た棚の下には、十人は座れそうなベンチシートやテーブルセットが設えられていた。
薔薇はリリーマルレーン、蔓サマースノー、ローズマリー、アイスバーグ…数えきれないほどにたくさんの種類が咲き乱れている。
…野生種も多いので正確な種類は、庭師の森野しか把握していないらしい。
「薔薇の季節は部屋の中にいるのはもったいないからね。
…紗耶ちゃんさえ良かったらディナーもここで摂ろう。
夜はこのパーゴラの下に小さな灯りとキャンドルを灯すのだよ。
灯りの中の薔薇はまた違う貌を見せてくれるんだ。
紗耶ちゃんに早く見せたいな…」
そう言いながら、千晴は紗耶のために恭しく椅子を引いてくれる。
…一緒に暮らして見ると千晴は驚くほどに優しく、細やかな世話焼きだった。
気温が下がると紗耶が風邪を引かないか心配し、温かいココアやミルクを自ら淹れて、手渡してくれる。
紗耶の部屋の空調からベッドの寝具まで気を配り、すべて千晴が手配し、或いは家政婦に事細かに指示を出しているのだ。
「紗耶様はお風邪を召しやすいのでくれぐれも気をつけるようにと、申し遣っております」
徳子の輿入れとともにこの屋敷に仕えているという家政婦の八重は美しく結い上げた銀髪を仰々しく下げた。
…どうやら千晴は、紗耶が昨年末に体調を崩し、センター試験や入試を受けられなくなったことをとても気に病んでいるらしい。
…別に、千晴お兄ちゃまのせいじゃないのに…。
紗耶は済まないような気持ちになる。
「今朝は料理長の民さんが紗耶ちゃんのために特製オムレツを作ってくれたそうだよ。
この間のオムレツを紗耶ちゃんがとても褒めてくれたから…て」
まだ若いメイドが丁寧に給仕する。
…使用人の多さにも、最初は戸惑ったが今では大分慣れてきた。
ミントンのターコイズのプレートには綺麗なクリーム色の如何にも美味しそうなオムレツがキドニービーンズやクレソンとともに載せられていた。
「アンチョビとブラックマッシュルームのオムレツね。
嬉しい…!本当にとても美味しかったの」
紗耶が眼を輝かすと、千晴はやや眩しそうに笑った。
「…良かった…。たくさん食べなさい。
今日は大学のオリエンテーションだろう?
初登校だね。
…そうだ、僕が大学まで送ろう。紗耶ちゃんが迷ったらいけない」
…過保護すぎるのも、想定外であった…。
薔薇はリリーマルレーン、蔓サマースノー、ローズマリー、アイスバーグ…数えきれないほどにたくさんの種類が咲き乱れている。
…野生種も多いので正確な種類は、庭師の森野しか把握していないらしい。
「薔薇の季節は部屋の中にいるのはもったいないからね。
…紗耶ちゃんさえ良かったらディナーもここで摂ろう。
夜はこのパーゴラの下に小さな灯りとキャンドルを灯すのだよ。
灯りの中の薔薇はまた違う貌を見せてくれるんだ。
紗耶ちゃんに早く見せたいな…」
そう言いながら、千晴は紗耶のために恭しく椅子を引いてくれる。
…一緒に暮らして見ると千晴は驚くほどに優しく、細やかな世話焼きだった。
気温が下がると紗耶が風邪を引かないか心配し、温かいココアやミルクを自ら淹れて、手渡してくれる。
紗耶の部屋の空調からベッドの寝具まで気を配り、すべて千晴が手配し、或いは家政婦に事細かに指示を出しているのだ。
「紗耶様はお風邪を召しやすいのでくれぐれも気をつけるようにと、申し遣っております」
徳子の輿入れとともにこの屋敷に仕えているという家政婦の八重は美しく結い上げた銀髪を仰々しく下げた。
…どうやら千晴は、紗耶が昨年末に体調を崩し、センター試験や入試を受けられなくなったことをとても気に病んでいるらしい。
…別に、千晴お兄ちゃまのせいじゃないのに…。
紗耶は済まないような気持ちになる。
「今朝は料理長の民さんが紗耶ちゃんのために特製オムレツを作ってくれたそうだよ。
この間のオムレツを紗耶ちゃんがとても褒めてくれたから…て」
まだ若いメイドが丁寧に給仕する。
…使用人の多さにも、最初は戸惑ったが今では大分慣れてきた。
ミントンのターコイズのプレートには綺麗なクリーム色の如何にも美味しそうなオムレツがキドニービーンズやクレソンとともに載せられていた。
「アンチョビとブラックマッシュルームのオムレツね。
嬉しい…!本当にとても美味しかったの」
紗耶が眼を輝かすと、千晴はやや眩しそうに笑った。
「…良かった…。たくさん食べなさい。
今日は大学のオリエンテーションだろう?
初登校だね。
…そうだ、僕が大学まで送ろう。紗耶ちゃんが迷ったらいけない」
…過保護すぎるのも、想定外であった…。