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異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
ミシェルの口調に静かな沈痛さが増した。
「…それからというもの、ツキシロは不眠不休でアキラの看病をしていた。
飲まず食わず、一睡もせず、一瞬たりともアキラの傍らから離れようとはしなかった。
その様子はまさに鬼気迫るものだったよ。
けれど、その献身的な看病や私たちの祈りも虚しく、数日後アキラは天国に旅立ってしまった。
…亡くなる間際は、実に安らかなものだった。
ただひたすら、ツキシロの手を握りしめ…うっすらと微笑みさえ浮かべて…ね…。
透き通るような透明感に包まれて…本当に美しいひとだった。
ツキシロは、アキラに口づけを繰り返していた。
…まるで、自分のキスでアキラを窒息させてしまいたいと願っているかのように…。
キスの合間に、二人はひたすらに愛の言葉を重ねていた。
…愛している…と。
それ以外の言葉は、彼らには必要なかったのだろう。
…最期にアキラは幸せそうに囁いた。
『…森より先に死ねて嬉しい…』…とね…。
…その時のツキシロの表情を、私は未だに忘れることはできない。
あんなに哀しく苦しく痛ましく…まるで自分の半身をもぎ取られてしまったかのような…いや、あれは虚無の表情だった…。
…愛するひとと同時に、世界も、何もかも喪った…虚無の表情だったのだ…」
藤木の胸が鋭いナイフに刺されたかのようにずきりと痛んだ。
…愛するひとを永遠に喪う…。
自分はまだ経験したことがない。
ふと、藤木の胸に、一人の愛おしい少女の面影が浮かんだ。
『愛しているわ…。先生…』
…紗耶…!
思わず叫び出したい衝動に駆られ…必死で踏み留まる。
…考えては駄目だ…。
忘れると…決めたのだから…。
ミシェルの哀しげな声が続いた。
「弔いの為の司祭を呼ぼうとする私を、ツキシロが拒んだ。
…そうして、彼はこう言ったのだ」
『ミシェル。
最後のお願いだ。
今宵一夜だけ、私と暁様二人きりにしてくれ』
…見たことのない、ツキシロという男の姿が、ゆらりと藤木の目の前に浮かび上がった…。
「…それからというもの、ツキシロは不眠不休でアキラの看病をしていた。
飲まず食わず、一睡もせず、一瞬たりともアキラの傍らから離れようとはしなかった。
その様子はまさに鬼気迫るものだったよ。
けれど、その献身的な看病や私たちの祈りも虚しく、数日後アキラは天国に旅立ってしまった。
…亡くなる間際は、実に安らかなものだった。
ただひたすら、ツキシロの手を握りしめ…うっすらと微笑みさえ浮かべて…ね…。
透き通るような透明感に包まれて…本当に美しいひとだった。
ツキシロは、アキラに口づけを繰り返していた。
…まるで、自分のキスでアキラを窒息させてしまいたいと願っているかのように…。
キスの合間に、二人はひたすらに愛の言葉を重ねていた。
…愛している…と。
それ以外の言葉は、彼らには必要なかったのだろう。
…最期にアキラは幸せそうに囁いた。
『…森より先に死ねて嬉しい…』…とね…。
…その時のツキシロの表情を、私は未だに忘れることはできない。
あんなに哀しく苦しく痛ましく…まるで自分の半身をもぎ取られてしまったかのような…いや、あれは虚無の表情だった…。
…愛するひとと同時に、世界も、何もかも喪った…虚無の表情だったのだ…」
藤木の胸が鋭いナイフに刺されたかのようにずきりと痛んだ。
…愛するひとを永遠に喪う…。
自分はまだ経験したことがない。
ふと、藤木の胸に、一人の愛おしい少女の面影が浮かんだ。
『愛しているわ…。先生…』
…紗耶…!
思わず叫び出したい衝動に駆られ…必死で踏み留まる。
…考えては駄目だ…。
忘れると…決めたのだから…。
ミシェルの哀しげな声が続いた。
「弔いの為の司祭を呼ぼうとする私を、ツキシロが拒んだ。
…そうして、彼はこう言ったのだ」
『ミシェル。
最後のお願いだ。
今宵一夜だけ、私と暁様二人きりにしてくれ』
…見たことのない、ツキシロという男の姿が、ゆらりと藤木の目の前に浮かび上がった…。