この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
「…寝台には、蜂蜜色の綺麗な紗の天蓋が掛かっていた。
それを私は震える手で払いのけた。
清潔な白いシーツの上には、鮮やかなイモーテルの花がふんだんに飾られ、そこはさながら花の褥のようだった。
…二人は、まるで優雅な朝寝を楽しんでいるかのように見えた。
亡くなっているとは俄に信じ難いほどに、安らかな表情で…微笑みさえ浮かべていた…。
…アキラは純白の絹のキモノを身に纏っていた。
その麗しい貌にはうっすらと化粧が施され、まるで生きているかのような穏やかな表情だった。
そんなアキラをツキシロは愛おしげに抱きしめていた。
彼もまた純白のキモノを身に着けていた。
…ジャポンでは亡くなるときに死装束と言って、白いキモノを身に纏うそうだね。
けれど私にはそれは二人の婚礼の衣装に見えたのだよ。
何故なら、二人は本当に幸せそうに微笑んでいたからね。
二人はお揃いの結婚指輪をして、しっかりと手を握り合っていた。
新婚の夫婦ですら、そんなに仲睦まじくはないだろうと思うほどに…ね。
私は二人の死の哀しみよりも、その美しさと気高さに思わず魅せられたのだった。
…ツキシロの傍には睡眠薬の空瓶が置かれていた。
恐らく昨夜、致死量の薬を煽ったのだろう。
きっと彼は、かねてから何もかも準備をしていたに違いない。
…もし、アキラが先に亡くなっても、すぐに後を追えるようにと…」
ミシェルは更に遠い記憶を思い起こすように眼を閉じた。
深い皺が刻まれた目尻に、涙が滲んでいた。
「…寝台のサイドテーブルには、何通かの手紙がきちんと並べて置かれていた。
私はそれらをひとつひとつ手に取った。
…ジャポンのアキラの実家に宛てたもの。
ツキシロのかつての主人に宛てたもの。
パリに住む古い友人に宛てたもの。
…そして、私宛のものもあった。
私は逸る気持ちを抑え、もどかしげに封を切った」
それを私は震える手で払いのけた。
清潔な白いシーツの上には、鮮やかなイモーテルの花がふんだんに飾られ、そこはさながら花の褥のようだった。
…二人は、まるで優雅な朝寝を楽しんでいるかのように見えた。
亡くなっているとは俄に信じ難いほどに、安らかな表情で…微笑みさえ浮かべていた…。
…アキラは純白の絹のキモノを身に纏っていた。
その麗しい貌にはうっすらと化粧が施され、まるで生きているかのような穏やかな表情だった。
そんなアキラをツキシロは愛おしげに抱きしめていた。
彼もまた純白のキモノを身に着けていた。
…ジャポンでは亡くなるときに死装束と言って、白いキモノを身に纏うそうだね。
けれど私にはそれは二人の婚礼の衣装に見えたのだよ。
何故なら、二人は本当に幸せそうに微笑んでいたからね。
二人はお揃いの結婚指輪をして、しっかりと手を握り合っていた。
新婚の夫婦ですら、そんなに仲睦まじくはないだろうと思うほどに…ね。
私は二人の死の哀しみよりも、その美しさと気高さに思わず魅せられたのだった。
…ツキシロの傍には睡眠薬の空瓶が置かれていた。
恐らく昨夜、致死量の薬を煽ったのだろう。
きっと彼は、かねてから何もかも準備をしていたに違いない。
…もし、アキラが先に亡くなっても、すぐに後を追えるようにと…」
ミシェルは更に遠い記憶を思い起こすように眼を閉じた。
深い皺が刻まれた目尻に、涙が滲んでいた。
「…寝台のサイドテーブルには、何通かの手紙がきちんと並べて置かれていた。
私はそれらをひとつひとつ手に取った。
…ジャポンのアキラの実家に宛てたもの。
ツキシロのかつての主人に宛てたもの。
パリに住む古い友人に宛てたもの。
…そして、私宛のものもあった。
私は逸る気持ちを抑え、もどかしげに封を切った」