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異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
ミシェルが二人の愛の家を、愛おしげに眺め回した。
「…私は彼ら亡きあと、この家と店を細々ながらも維持してきた…。
彼らの想い出を懐かしみ、訪ねる人々のためにカフェを開き続けたのだ。
彼らは本当にたくさんの人々に愛されていたからね」
…世界大戦の緊迫した時代、日本から来た亡命者がこの南仏の避暑地に店を開き、街の人々に愛されるようになることは決して容易ではなかったはずだ。
それだけ、彼らに人を惹きつけるたくさんの魅力があったのだろう。
美しさだけでなく、その人柄や知性、寛容さなど…。
改めて、藤木は見たことも会ったこともない二人に敬愛と親愛を深くした。
「…けれど、私ももう歳を取りすぎた。
いつ神様の元に召されるか分からない。
さすがに店の方は数年前に止むなく閉店し、家だけを管理してきたが…。
いつまで彼らのこの愛の家を、このまま維持できるか…」
寂しげなミシェルの言葉に、藤木は首を振った。
「そんな…。
ミシェルはまだまだお元気ですよ」
「…プロフェッサー。
私は君がここにふらりと訪れたとき、運命を感じたのだよ。
彼らと同じ日本人で…しかも、何か苦しい事情があって日本を離れたらしい君にね…」
ミシェルの柔らかな眼差しを受け、藤木ははっとした。
「…君はここで、あの可愛らしくも一途なマドモアゼルとともに愛に生きるべきなのではないのかな?
愛する人を思い、香水を作り続けることもロマンチックだがね」
藤木は榛色の瞳を驚きに見開いた。
「ミシェル…?
それはどういう…」
…その時、ミシェルの自宅の漆喰の扉がゆっくりと開いた。
「まあまあ、ミシェル。
そんな意地悪な言い方をなさらなくても良いのではないかしら?」
…品の良い、淑やかな優しい声が響いた。
ミシェルはすぐさま首を巡らし、その瞳を細めて、愛おしげに声を上げた。
「おお、ルリコ…!
君のシエスタを起こしてしまったかな?」
「…私は彼ら亡きあと、この家と店を細々ながらも維持してきた…。
彼らの想い出を懐かしみ、訪ねる人々のためにカフェを開き続けたのだ。
彼らは本当にたくさんの人々に愛されていたからね」
…世界大戦の緊迫した時代、日本から来た亡命者がこの南仏の避暑地に店を開き、街の人々に愛されるようになることは決して容易ではなかったはずだ。
それだけ、彼らに人を惹きつけるたくさんの魅力があったのだろう。
美しさだけでなく、その人柄や知性、寛容さなど…。
改めて、藤木は見たことも会ったこともない二人に敬愛と親愛を深くした。
「…けれど、私ももう歳を取りすぎた。
いつ神様の元に召されるか分からない。
さすがに店の方は数年前に止むなく閉店し、家だけを管理してきたが…。
いつまで彼らのこの愛の家を、このまま維持できるか…」
寂しげなミシェルの言葉に、藤木は首を振った。
「そんな…。
ミシェルはまだまだお元気ですよ」
「…プロフェッサー。
私は君がここにふらりと訪れたとき、運命を感じたのだよ。
彼らと同じ日本人で…しかも、何か苦しい事情があって日本を離れたらしい君にね…」
ミシェルの柔らかな眼差しを受け、藤木ははっとした。
「…君はここで、あの可愛らしくも一途なマドモアゼルとともに愛に生きるべきなのではないのかな?
愛する人を思い、香水を作り続けることもロマンチックだがね」
藤木は榛色の瞳を驚きに見開いた。
「ミシェル…?
それはどういう…」
…その時、ミシェルの自宅の漆喰の扉がゆっくりと開いた。
「まあまあ、ミシェル。
そんな意地悪な言い方をなさらなくても良いのではないかしら?」
…品の良い、淑やかな優しい声が響いた。
ミシェルはすぐさま首を巡らし、その瞳を細めて、愛おしげに声を上げた。
「おお、ルリコ…!
君のシエスタを起こしてしまったかな?」