この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
…『ルリコは瑠璃子と書くのですよ。
プロフェッサーと同じ生粋の日本人ですの』
この家に入居したとき、自宅にお茶に招いてくれた瑠璃子は優しく微笑みながらそう教えてくれた。
…瑠璃子…ルリコ・エルメはパリ生まれのパリ育ち。
父親は今や世界中にいくつも支店を持つパリの三つ星ホテル、オテル・ド・カザマの創始者、風間忍だそうだ。
戦前からのフランスでの日系企業の成功者として、その名はフランスはもとより今や世界中に轟いている。
母親はカジュアルで可愛らしく仕立てが良い…しかも安価なことで人気のあるフランスの子ども服のブランドのオーナーだ。
貴族の出ではないが、実家はパリの16区に屋敷を構えるいわゆるブルジョワ層の出身だ。
『ルリコはそれはそれは父親に可愛がられていてね。
私は結婚の許しはおろか、交際すらも認めてはもらえなかったのさ。
…当時私はまだ一介のペンションと花屋の息子であり、フラワーアレンジメントを勉強し始めた駆け出しの学生だったからね。
ムッシュ・カザマを喜ばせるものは何も持ち得ていなかった…。
16区の屋敷に行っても門前払い。
ルリコとはこっそりと夜中のバルコニー越しに話しをしたっけ…。
まるでロミオとジュリエットだ』
ミシェルは瑠璃子を見つめながら、いたずらっぽくウィンクした。
『父は私をニューヨークのホテル王の息子に嫁がせたかったのですよ。
イェール大学出の秀才の御曹司でね。
…とてもハンサムで良い方だったし、私を気に入ってくださって…。
熱心にプロポーズされたのだけれど…』