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異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
「…忍さん…」
美しい眉を寄せる暁に、風間は形の良い唇の端を歪め、コニャックを乱暴に煽った。

「…俺はまだいい。
この曽祖父譲りの日本人離れした容姿で得もした。
…けれど、百合子は…」
更に苦しげに…まるでどこかが痛むかのように眉を顰めた。

「…百合子は散々偏見や差別に晒された。
聞こえよがしに侮辱的な言葉を投げつけられたこともある。
大戦が始まってからは、日本人バッシングが更に酷くなった。
開店したばかりの百合子の子ども服の店は何度も石を投げられ、嫌がらせをされた。
…大方、百合子の成功が妬ましかったのだろう。
けれど、次第にその矛先は瑠璃子にも向かうようになった。
瑠璃子は一度、誘拐されかけたことがあった。
それ以来、百合子は自分を責めてね。
漸く軌道に乗せた店を辞めようとした。
俺が説得してなんとか踏みとどまったが…。
けれど一時は塞ぎ込み、家に閉じ篭もってしまった。
閉じ籠もって、泣いてばかりの日々が続いたよ…」

初めて聞く事実だった。
暁は痛ましげに息を吐いた。

「…知らなかった…。
…そんな大変なことがあったなんて…」

…百合子は子ども服の店のオーナーとして大成功し、順風満帆な生活を送っているとばかり思っていた。
暁の知る百合子は、忙しい実業家なのに、家庭のことや育児にも決して手を抜かない…夫を立て、風間の後ろに控えめに佇み…けれどいつも柔かな幸せそうな笑みを浮かべているまさに良妻賢母の鑑のような姿だったからだ。
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