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異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
「僕は百合子さんにフィッシュパイをお届けしてくるよ。
熱々の方がいいからね」
暁が居間を後にすると二人きりになる。
途端に、風間はなんとなくバツが悪くなり、キャビネットからカミュを取り出し、月城に陽気に勧めた。
「一杯やらないか?
貴方は酒は強かったはずだね」
パリのバーで一度飲んだことがある。
月城は全く顔色も態度も変わらず、酒の強い風間ですら舌を巻いたほどだ。
「ありがとうございます。
では、いただきます」
礼儀正しくグラスを受け取り、口を付ける。
月城は柔らかな笑みを湛えたまま、続けた。
「…けれど、暁様は相変わらずお弱いです。
ワイン一口ですっかり酔ってしまわれるほどに…。
…ああ、ご存知ですよね?
風間様は私より、暁様とはお付き合いが古くていらっしゃるから…」
「…そ、そうだね。
そうだったかな…」
意味深な言葉に聞こえ、妙に慌ててしまう。
「ええ。暁様はとてもお酒がお弱いのです。
…ですから、暁様にお酒を勧められるのは、僭越ながらお控えいただきたいのです」
…思わぬ羽目を外されかねませんからね…。
ひんやりとした口調で囁かれる。
美しい黒い伶俐な瞳は、少しも笑ってはいなかった。
「…肝に、銘じよう…」
風間はタジタジになりながら、杯を煽った。
…なぜなら…
月城は恐ろしいほど、暁に近づく男に対して牽制をするのだから…。
下手に手を出そうとすれば、殺されかねないほどの狂気すら孕んだ…けれど一見静謐に見える怒りを、彼は未だに心に秘めているのだ。
熱々の方がいいからね」
暁が居間を後にすると二人きりになる。
途端に、風間はなんとなくバツが悪くなり、キャビネットからカミュを取り出し、月城に陽気に勧めた。
「一杯やらないか?
貴方は酒は強かったはずだね」
パリのバーで一度飲んだことがある。
月城は全く顔色も態度も変わらず、酒の強い風間ですら舌を巻いたほどだ。
「ありがとうございます。
では、いただきます」
礼儀正しくグラスを受け取り、口を付ける。
月城は柔らかな笑みを湛えたまま、続けた。
「…けれど、暁様は相変わらずお弱いです。
ワイン一口ですっかり酔ってしまわれるほどに…。
…ああ、ご存知ですよね?
風間様は私より、暁様とはお付き合いが古くていらっしゃるから…」
「…そ、そうだね。
そうだったかな…」
意味深な言葉に聞こえ、妙に慌ててしまう。
「ええ。暁様はとてもお酒がお弱いのです。
…ですから、暁様にお酒を勧められるのは、僭越ながらお控えいただきたいのです」
…思わぬ羽目を外されかねませんからね…。
ひんやりとした口調で囁かれる。
美しい黒い伶俐な瞳は、少しも笑ってはいなかった。
「…肝に、銘じよう…」
風間はタジタジになりながら、杯を煽った。
…なぜなら…
月城は恐ろしいほど、暁に近づく男に対して牽制をするのだから…。
下手に手を出そうとすれば、殺されかねないほどの狂気すら孕んだ…けれど一見静謐に見える怒りを、彼は未だに心に秘めているのだ。