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異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
「…貴方は相変わらずだな…」
風間は苦笑いしながら、呟いた。

「はい?」
月城が端正な眉を寄せた。

風間は出窓に背中を預け、腕を組んだ。
「相変わらず、暁しか見ていない。
…いや、それは暁もそうだな。
二人とも相変わらず、呆れるほどに愛し合い、思い合っている。
息苦しいくらいにね…。
特に貴方は」
少し揶揄うように笑うと、意外にも月城は微かに焦燥感と寂寥感を滲ませたような表情で、その形の良い口唇を歪めた。

「…それは…
自分に自信がないからですよ」
ぽつりと呟いた。

今度は風間が眉間に皺を寄せる番だ。

「自信がない?
貴方に一番似つかわしくない言葉だな。
まさか。貴方に限ってそんな」

「本当ですよ。
…暁様が一番初めに好きになった方は縣様です。
実のお兄様ですから実らぬ恋でしたが…。
それから、長く付き合われた方は大紋様でした。
…ご存知かと思いますが、大紋様とは不仲になってお別れになった訳ではありません。
本当はお二人とも深く愛し合っておられた…。
事情があり、仕方なく暁様が身を引かれたのですから…」

「…月城さん…。
そんな…昔の話じゃないか…」

…暁のかつての恋人・大紋春馬との悲恋話は風間もよく承知している。
暁は大紋の将来を慮り、泣く泣く彼と別れたのだ。 
…その傷心の暁を慰める内に、風間との短い恋が始まったのだが…。

月城はふっと風間を見上げ、その涼やかな瞳を眇めた。

「風間様は…暁様のお好みのタイプですしね…」

「俺が?そうなのか?」
意外な話に眼を見張る。
「ご存知ありませんでしたか?
…お伝えするのは悔しいですが、真実です。
暁様は風間様のように明るく華やかな美男子がお好きなのですよ。
…いつぞやも貴方の容姿を盛んに褒めておられましたから…」
面白くもなさそうに語ると、グラスを一気に煽った。

風間は一瞬呆気に取られたのち、声を出して笑い転げた。

「風間様…。
笑いごとではありませんよ」
憮然とする月城の肩に、笑いを堪えながら手を置いた。

「…いや、失礼。
暁が俺の貌を好きなのは思いがけない嬉しさだ。
もっと早く知りたかったよ。
…まあそんな眼で見ないでくれ。
別れてから清い関係なんだ。
少しは俺にもご褒美があっても良いだろう」

そうして笑いを納め、告げた。

「どうせ暁は、貴方以外どうでも良いのだからさ」





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