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異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
「…百合子は今、自分の事業が大成功してね。
俺より忙しいくらいだ。
瑠璃子も大きくなったし、仕事に全力を注げるようになったからね。
帰りは俺よりも遅い深夜のこともある。
…もちろん、百合子はそれで家のことに手を抜くような女じゃない。
家のことも、妻として母としての仕事もすべてにおいて完璧にしようとしている。
事実、よく尽くしてくれている」
「ええ。
僭越ながら、百合子様のように素晴らしい奥様はいらっしゃらないと拝察しております」
パリの社交界でも百合子の賢夫人ぶりは大変有名らしい。
「…けれどたまにふと、はっとするほどに寂しそうな眼をして俺を見つめていることがある。
どうした?と聞いても、黙って微笑んで首を振るだけだ。
…もしかして、百合子は日本に帰りたいのではないだろうか。
…俺とフランスに渡ったことをほんの僅かでも、後悔しているんじゃないだろうかと」
…怖くて尋ねられないんだ。
小さな声は、普段王者のように自信と余裕に満ち溢れた風間らしくないものだった。
「恐れながら、それはないかと存じます」
月城は思慮深く答えた。
「百合子様はこちらで本当に生き生きと活躍されているご様子です。
先日もお仕事が楽しい、パリの生活にもすっかり慣れたと嬉しそうに仰っていました」
月城は百合子とはたまに交流がある。
最近、ニースの繁華街にも百合子の子供服の店が出店された。
そのため時々、従業員や友人たちを連れて月城のビストロを訪れてくれることがあるのだ。
「…それに、日本へはもうお帰りになりたかったらお帰りになれる状況ですし…。
事実、司様にお会いになりにもう二度ほどご帰国はされていらっしゃいますよね?」
折り合いの良くなかった風間の両親や百合子の継母は既に鬼籍に入り、帰国を憂慮する理由はなくなったのだ。
「…それもそうだな…」
大人しく頷いた。
そうして風間は葉巻を咥えながら、ぽつりと呟いた。
「…じゃあ、やはり原因は俺だな」
「風間様が…ですか?」
月城が不思議そうに聞き返した。
「笑わないで聞いてくれるか?
それから、このことは内密にしてほしい」
「もちろんです」
風間は少々困惑したように…けれど真剣に打ち明けた。
「…百合子が俺とのセックスを拒むんだ」
俺より忙しいくらいだ。
瑠璃子も大きくなったし、仕事に全力を注げるようになったからね。
帰りは俺よりも遅い深夜のこともある。
…もちろん、百合子はそれで家のことに手を抜くような女じゃない。
家のことも、妻として母としての仕事もすべてにおいて完璧にしようとしている。
事実、よく尽くしてくれている」
「ええ。
僭越ながら、百合子様のように素晴らしい奥様はいらっしゃらないと拝察しております」
パリの社交界でも百合子の賢夫人ぶりは大変有名らしい。
「…けれどたまにふと、はっとするほどに寂しそうな眼をして俺を見つめていることがある。
どうした?と聞いても、黙って微笑んで首を振るだけだ。
…もしかして、百合子は日本に帰りたいのではないだろうか。
…俺とフランスに渡ったことをほんの僅かでも、後悔しているんじゃないだろうかと」
…怖くて尋ねられないんだ。
小さな声は、普段王者のように自信と余裕に満ち溢れた風間らしくないものだった。
「恐れながら、それはないかと存じます」
月城は思慮深く答えた。
「百合子様はこちらで本当に生き生きと活躍されているご様子です。
先日もお仕事が楽しい、パリの生活にもすっかり慣れたと嬉しそうに仰っていました」
月城は百合子とはたまに交流がある。
最近、ニースの繁華街にも百合子の子供服の店が出店された。
そのため時々、従業員や友人たちを連れて月城のビストロを訪れてくれることがあるのだ。
「…それに、日本へはもうお帰りになりたかったらお帰りになれる状況ですし…。
事実、司様にお会いになりにもう二度ほどご帰国はされていらっしゃいますよね?」
折り合いの良くなかった風間の両親や百合子の継母は既に鬼籍に入り、帰国を憂慮する理由はなくなったのだ。
「…それもそうだな…」
大人しく頷いた。
そうして風間は葉巻を咥えながら、ぽつりと呟いた。
「…じゃあ、やはり原因は俺だな」
「風間様が…ですか?」
月城が不思議そうに聞き返した。
「笑わないで聞いてくれるか?
それから、このことは内密にしてほしい」
「もちろんです」
風間は少々困惑したように…けれど真剣に打ち明けた。
「…百合子が俺とのセックスを拒むんだ」