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異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
「突然伺いましたご無礼をどうかお許し下さい。
ムッシュ・カザマ。
今日は大事なお願いに上がりました」
「お願い?
なんだね?」
意地悪く風間が凛々しい眉を跳ね上げる。
するといきなり、ミシェルがその場に跪き、頭を深々と下げた。
…いわゆる、土下座の格好だ。
「お、おい!何を…!」
狼狽する風間を、ミシェルはその澄んだ海の色の瞳でじっと見つめ返した。
「ジャポンには土下座というストイックな文化があると聞きました。
心からのお願いをする際の必須なスタイルだと…」
「…何か著しい誤解があるようだが…」
ぶつぶつ呟く風間には気づかず、ミシェルは熱く語り始める。
「ルリコを…いいえ、ルリコさんと結婚させてください!」
一瞬、図らずも呆気に取られた。
しかし、直ぐに不快感を露わにしながら風間は問い正す。
「…何と言った?
俺の耳は今、実にcrazyな言葉を拾ったぞ?」
「お父様…!お願い!
ミシェルのお話を聞いて…!」
傍らに立つ瑠璃子がその美しく大きな瞳に涙を浮かべ、白く華奢な両手を合わせていた。
…長くしなやかな黒髪は、上質な真珠の髪飾りで華やかに結い上げられていた。
純白のレースのプリンセス袖のドレスを身に纏った瑠璃子は、ため息が出るほどに美しく、また、匂い立つかのような艶めいた女性らしさを既にふわりと醸し出していたのだ…。
「お願いよ。お父様…!」
「…瑠璃子…」
瑠璃子を溺愛している風間が、その言葉を無視できるはずはなかった。
「…わかったよ。
続けたまえ」
渋々ではあるその言葉に、勇気を得たミシェルは瑠璃子と眼を合わせたのち、凛とした態度と言葉で風間に語りかけた。
「僕は瑠璃子さんを愛しています。
幼い頃、瑠璃子さんにお会いした瞬間、僕は恋に堕ちました。
そして、僕は思ったのです。
僕はきっとこのひとと結婚する。
このひとと、運命を共にする…と」
「…マセたガキだな…」
口髭を弄りながら皮肉な表情で、嘯く。
この世の終わりのような哀しい眼差しで、瑠璃子は風間を見上げていた。
「…お父様、お願いだから…!」
「…わかったよ…」
小声で、ため息混じりに呟き…
「続けたまえ。ミシェル・エルメ。
…もう口は挟まないよ」
…それは、本来の風間が常に心に秘めている優しい穏やかな言葉であった。
ムッシュ・カザマ。
今日は大事なお願いに上がりました」
「お願い?
なんだね?」
意地悪く風間が凛々しい眉を跳ね上げる。
するといきなり、ミシェルがその場に跪き、頭を深々と下げた。
…いわゆる、土下座の格好だ。
「お、おい!何を…!」
狼狽する風間を、ミシェルはその澄んだ海の色の瞳でじっと見つめ返した。
「ジャポンには土下座というストイックな文化があると聞きました。
心からのお願いをする際の必須なスタイルだと…」
「…何か著しい誤解があるようだが…」
ぶつぶつ呟く風間には気づかず、ミシェルは熱く語り始める。
「ルリコを…いいえ、ルリコさんと結婚させてください!」
一瞬、図らずも呆気に取られた。
しかし、直ぐに不快感を露わにしながら風間は問い正す。
「…何と言った?
俺の耳は今、実にcrazyな言葉を拾ったぞ?」
「お父様…!お願い!
ミシェルのお話を聞いて…!」
傍らに立つ瑠璃子がその美しく大きな瞳に涙を浮かべ、白く華奢な両手を合わせていた。
…長くしなやかな黒髪は、上質な真珠の髪飾りで華やかに結い上げられていた。
純白のレースのプリンセス袖のドレスを身に纏った瑠璃子は、ため息が出るほどに美しく、また、匂い立つかのような艶めいた女性らしさを既にふわりと醸し出していたのだ…。
「お願いよ。お父様…!」
「…瑠璃子…」
瑠璃子を溺愛している風間が、その言葉を無視できるはずはなかった。
「…わかったよ。
続けたまえ」
渋々ではあるその言葉に、勇気を得たミシェルは瑠璃子と眼を合わせたのち、凛とした態度と言葉で風間に語りかけた。
「僕は瑠璃子さんを愛しています。
幼い頃、瑠璃子さんにお会いした瞬間、僕は恋に堕ちました。
そして、僕は思ったのです。
僕はきっとこのひとと結婚する。
このひとと、運命を共にする…と」
「…マセたガキだな…」
口髭を弄りながら皮肉な表情で、嘯く。
この世の終わりのような哀しい眼差しで、瑠璃子は風間を見上げていた。
「…お父様、お願いだから…!」
「…わかったよ…」
小声で、ため息混じりに呟き…
「続けたまえ。ミシェル・エルメ。
…もう口は挟まないよ」
…それは、本来の風間が常に心に秘めている優しい穏やかな言葉であった。