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異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
「お父様、シンプソン様は良い方です。
知的でお優しく洗練された素晴らしい紳士です。
決して押し付けがましくなく、誠実にプロポーズしてくださいました。
私にはもったいないようなお方です。
お父様が、私の幸せを考えてくださっているのもよくわかります。
…けれど、私はシンプソン様を夫として愛することはできません。
私にはもう愛するミシェルがいるからです。
ミシェル以外は、愛せないからです。
愛せない方と結婚することは、私にはできません。
たとえ、愛するお父様のご命令でも…私には…」
透明の水晶のような涙が溢れ、その薔薇の花弁に似た口唇が震える。
風間は堪らずに瑠璃子を抱き上げた。
…大人しく控えめな娘が、これほどの決意を皆の前で示すにはどれだけの勇気が要ったことだろう…。
「もういい…。
瑠璃子…もう何も言わなくていい…。
お父様が悪かった…」
最愛の娘を強く抱きしめ、言葉を詰まらせる。
「…お父様…!」
「お前の意に染まぬ結婚なんて勧めて…俺はなんて酷い父親なんだ…!」
苦しげにため息を吐く。
「…そうですよ、忍さん」
暁の透き通る美しい声が、優しく唄うように続く。
『…俺は百合子を心から愛している。
百合子を政略結婚の道具になんかさせない。
絶対に他の男には渡さない。
どんなことをしても百合子を守る。
そのためには日本を捨てたって構わない。
そうして、百合子を俺の妻にする。
…だって、俺が愛している女は百合子しかいないんだから…』
暁は百合子を振り返って微笑んだ。
「ねえ、百合子さん。
そうですよね。
忍さんは、そうやって貴女をまるで野蛮な海賊のように攫って、司くんと一緒に連れて行ってしまわれたのですよね」
百合子はその白磁のように白く滑らかな頰に溢れ落ちる涙を拭おうともせず、小さく頷いた。
「…ええ…ええ…。
…心臓が止まるくらい…幸せでしたわ…。
思い出すと、今も嬉しさで震えるくらいです。
忍さんのお言葉を聞いて…もう死んでも構わないと思いました…」
…その美しい貌は、眩しいほどの歓びで輝いていた…。
「…百合子…!」
風間の端正な眼差しが熱く潤んだ。
暁は陽気に悪戯めいて笑った。
「…お話の続きは、皆んなでランチをいただきながらにしませんか?
せっかくの月城の絶品フィッシュパイが冷めてしまいますからね」
知的でお優しく洗練された素晴らしい紳士です。
決して押し付けがましくなく、誠実にプロポーズしてくださいました。
私にはもったいないようなお方です。
お父様が、私の幸せを考えてくださっているのもよくわかります。
…けれど、私はシンプソン様を夫として愛することはできません。
私にはもう愛するミシェルがいるからです。
ミシェル以外は、愛せないからです。
愛せない方と結婚することは、私にはできません。
たとえ、愛するお父様のご命令でも…私には…」
透明の水晶のような涙が溢れ、その薔薇の花弁に似た口唇が震える。
風間は堪らずに瑠璃子を抱き上げた。
…大人しく控えめな娘が、これほどの決意を皆の前で示すにはどれだけの勇気が要ったことだろう…。
「もういい…。
瑠璃子…もう何も言わなくていい…。
お父様が悪かった…」
最愛の娘を強く抱きしめ、言葉を詰まらせる。
「…お父様…!」
「お前の意に染まぬ結婚なんて勧めて…俺はなんて酷い父親なんだ…!」
苦しげにため息を吐く。
「…そうですよ、忍さん」
暁の透き通る美しい声が、優しく唄うように続く。
『…俺は百合子を心から愛している。
百合子を政略結婚の道具になんかさせない。
絶対に他の男には渡さない。
どんなことをしても百合子を守る。
そのためには日本を捨てたって構わない。
そうして、百合子を俺の妻にする。
…だって、俺が愛している女は百合子しかいないんだから…』
暁は百合子を振り返って微笑んだ。
「ねえ、百合子さん。
そうですよね。
忍さんは、そうやって貴女をまるで野蛮な海賊のように攫って、司くんと一緒に連れて行ってしまわれたのですよね」
百合子はその白磁のように白く滑らかな頰に溢れ落ちる涙を拭おうともせず、小さく頷いた。
「…ええ…ええ…。
…心臓が止まるくらい…幸せでしたわ…。
思い出すと、今も嬉しさで震えるくらいです。
忍さんのお言葉を聞いて…もう死んでも構わないと思いました…」
…その美しい貌は、眩しいほどの歓びで輝いていた…。
「…百合子…!」
風間の端正な眼差しが熱く潤んだ。
暁は陽気に悪戯めいて笑った。
「…お話の続きは、皆んなでランチをいただきながらにしませんか?
せっかくの月城の絶品フィッシュパイが冷めてしまいますからね」