この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第17章 secret garden 〜永遠の庭〜
「…ねえ、瑠璃子ちゃん。
客間でピアノを弾いてちょうだい。
貴女この間、ソルボンヌのお友達とサロンコンサートを開いたでしょう?
あの『愛の挨拶』は素晴らしかったわ。
皆さんにご披露したらいかが?
ミシェルもきっと聴きたいでしょう?」
風間の突拍子もない話に困惑している若い二人の重苦しい雰囲気を一掃するように百合子が明るく提案した。
意を汲んだミシェルはすぐさま頷いた。
「ありがとうございます。
ルリコ、ぜひ聴かせて。
それから僕の大好きなガーシュインも。
『ラプソディインブルー』がいいな」
瑠璃子は漸く笑顔を取り戻した。
「…いいわ。ミシェル。
行きましょう」
ミシェルと瑠璃子が遠慮勝ちに手を繋ぎながら庭園を後にするのを優しい眼差しで見送り、百合子は傍らの月城に話しかけた。
「昨日、泉さんからお手紙と写真が届きましたのよ。
司と泉さんの写真は久しぶりですわ。
月城さんにもぜひ見ていただきたくて…」
月城は恭しく一礼し、微笑んだ。
「ありがとうございます。
弟は私には筆不精で、なかなか手紙を寄越さないのです。
ありがたいです」
月城の弟、泉と百合子の息子、司の関係はあからさまに口には出さないが、百合子も月城も公認の仲である。
「お兄様にはなんとなく照れくさいのでしょう。
…客間にありますのよ。
どうぞ、ご一緒に…」
…と、母屋に向かう二人の後に続こうとした暁の腕が、強引に掴まれた。
振り返り、その貌を振り仰ぎ…
「…忍さ…」
…そのまま、丈の長いミモザの茂みに押しつけられた。
ミモザの鮮やかな花弁が雪のように暁の髪に降り掛かる。
風間の引き締まった身体が、覆い被さるように暁に迫る。
愛を囁くような甘い声が、男の口唇から漏れた。
「…結局、暁の望む通りになっただろう?
ご褒美をくれないか?」
口づけするような距離に、男が近づく。
吐息と視線が、甘く濃密に絡み合う。
風間の琥珀色の美しい瞳に、熱く見つめられる。
…一瞬…遠い昔の、懐かしい恋の記憶が生々しく蘇る。
「…忍さん…」
暁の薄紅色の口唇が、誘うように微かに開かれた…。
客間でピアノを弾いてちょうだい。
貴女この間、ソルボンヌのお友達とサロンコンサートを開いたでしょう?
あの『愛の挨拶』は素晴らしかったわ。
皆さんにご披露したらいかが?
ミシェルもきっと聴きたいでしょう?」
風間の突拍子もない話に困惑している若い二人の重苦しい雰囲気を一掃するように百合子が明るく提案した。
意を汲んだミシェルはすぐさま頷いた。
「ありがとうございます。
ルリコ、ぜひ聴かせて。
それから僕の大好きなガーシュインも。
『ラプソディインブルー』がいいな」
瑠璃子は漸く笑顔を取り戻した。
「…いいわ。ミシェル。
行きましょう」
ミシェルと瑠璃子が遠慮勝ちに手を繋ぎながら庭園を後にするのを優しい眼差しで見送り、百合子は傍らの月城に話しかけた。
「昨日、泉さんからお手紙と写真が届きましたのよ。
司と泉さんの写真は久しぶりですわ。
月城さんにもぜひ見ていただきたくて…」
月城は恭しく一礼し、微笑んだ。
「ありがとうございます。
弟は私には筆不精で、なかなか手紙を寄越さないのです。
ありがたいです」
月城の弟、泉と百合子の息子、司の関係はあからさまに口には出さないが、百合子も月城も公認の仲である。
「お兄様にはなんとなく照れくさいのでしょう。
…客間にありますのよ。
どうぞ、ご一緒に…」
…と、母屋に向かう二人の後に続こうとした暁の腕が、強引に掴まれた。
振り返り、その貌を振り仰ぎ…
「…忍さ…」
…そのまま、丈の長いミモザの茂みに押しつけられた。
ミモザの鮮やかな花弁が雪のように暁の髪に降り掛かる。
風間の引き締まった身体が、覆い被さるように暁に迫る。
愛を囁くような甘い声が、男の口唇から漏れた。
「…結局、暁の望む通りになっただろう?
ご褒美をくれないか?」
口づけするような距離に、男が近づく。
吐息と視線が、甘く濃密に絡み合う。
風間の琥珀色の美しい瞳に、熱く見つめられる。
…一瞬…遠い昔の、懐かしい恋の記憶が生々しく蘇る。
「…忍さん…」
暁の薄紅色の口唇が、誘うように微かに開かれた…。