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異邦人の庭 〜secret garden〜
第4章 ミス・アリスと午後のお茶を…
「あはは!薔薇作り?
あんた…何で…そんな素っ頓狂な…」
お腹を抱えて笑い続ける青年に、さすがの紗耶も少しむっとする。
「…だって、ペニー・レーンは薔薇の名前だから…」
「あ?そうなの?へえ〜、初めて聞いたよ。
…ペニー・レーンはね、ビートルズの曲の名前。
ジョン・レノンたちの出身地リバプールの小さな通りの名前なんだ。
それがサークル名になってんの」
「…あ…。そ、そうなんですか…。
す、すみません…」
早とちりしてしまった恥ずかしさに、紗耶は白い首筋を桜色に染めて俯く。
…やだ…。私ったらそそっかしい…!

しかし青年はそれ以上笑ったりはせず、ワイルドな男らしさの中に賢さが感じられる眼差しで紗耶を見上げた。
「…薔薇作りねえ…。
そういうのが好きなの?」
「…は、はい。
…私、薔薇のガーデニングが好きで…。
だからてっきりそういうサークルかと…すみません…」
「ふうん…。
薔薇のガーデニングね…。
…あんたにぴったりだな」
青年の眼差しが、優しく和らいだ。
「…え?」

…しかし…
「だってよ、その格好!
…昔のロマンチックな洋画でお嬢様がパーティかなんかに行くような格好じゃん?
どこのお姫様なのかと一瞬、ビビッたよ」
断言され、紗耶は思わず自分の姿を見下ろした。

…ローラ・アシュレイの春物のワンピース…。
ベビーピンクに白い小さな野薔薇が描かれているそれは今朝、千晴に
「…紗耶ちゃんに似合うと思ってオーダーしておいたよ。
パンプスとバッグもコーディネートしてあるから、良かったら使って」
と手渡されたものだ。

「…可笑しいですか…?この格好…」
しゅんとする紗耶に青年は肩を竦め
「別に。
今時珍しいクラシカルなお嬢様のスタイルだなって思っただけ」
とあっさり答えた。

そうして
「俺たちはペニー・レーンて言う弦楽アンサンブルサークルなんだ。
…楽器はアコースティックギターやエレキギター、ベース、マンドリン、コントラバス、チェロ、津軽三味線…。弦があるならなんでもOK。
それで弾く曲はビートルズやストーンズ、ツェッペリン、クイーン、D・ボウイ、M・ジャクソン、オアシス…まあ、ロックが中心かな。
ちなみに俺はギター担当。
…あんた、何か楽器弾ける?」
と、唐突に尋ねてきたのだ。
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