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異邦人の庭 〜secret garden〜
第4章 ミス・アリスと午後のお茶を…
「…楽器…ですか?」
「うん。そう」
紗耶はやや躊躇いながら口を開いた。
「…ヴァイオリンなら…三歳から…習っていますけれど…」
青年の瞳がきらりと光った。
「ヴァイオリン⁈マジか!
しかも三歳から⁈すっげ〜じゃん!
やっぱお嬢様はヴァイオリンを習うんだな〜」
慌てて首を振る。
「で、でも!上手くはないですよ。
…コンクールでは毎回予選落ちでしたし…」
…生来のあがり症で、コンクールは散々な結果だった…。
「…受験勉強で、レッスンも一年近くお休みしていますし…」

…千晴は
「紗耶ちゃん、ヴァイオリンのレッスンをそろそろ再開したらどうかな?
今まで習っていた先生に、うちに出稽古に来てもらえばいい。
僕は紗耶ちゃんのヴァイオリンをまた聴いてみたいな」
と勧めていたのだが…。

「コンクールに出るくらいの腕前か。すげ〜じゃん!
ねえ、あんたさ。うちのサークルに入らない?
うちのサークル、ヴァイオリン担当だけがずっといなくてさ…。
ヴァイオリンがいないと、音に幅と艶がでねえんだよ!
俺はさ、ニルヴァーナの曲を卒業するまでに定演で演奏するのが夢なんだよ!
頼む!この通り!」
理解不能な内容を捲し立てられた上に両手を合わされ、紗耶はたじろぐ。
「…で、でも…私…ロックなんて…聴いたことも弾いたこともないし…」
「それは大丈夫!俺たちが教えるし…」
…と、言いかけ…

「ハラ減ったな〜。
よし、一緒にメシ食いに行こうぜ!
話はそれからだ」
不意に立ち上がった。

…背が高いひとだな…。
千晴お兄ちゃまと同じくらいかな…。
紗耶はぼんやりと見上げながら…ふと我に返り、慌てる。
「え?メ、メシ?」
「そ、メシ。食ってないだろ?昼メシ」
「…は、はい…」
…一人で学食に入る勇気はなく、このまま帰るつもりだった…。

青年はにっこり笑った。
「なら、食いに行こう。奢るよ。
…俺は経済学部二年の大嶋隼人。
あんたは?」
釣られるように、口を開いていた。
「…文学部一年の二宮紗耶です」

…青年…隼人は少しだけ眩しげに口元を綻ばせた。
「…紗耶か…。すごく綺麗な名前だな…」

…そうして…
「行こうぜ。
早く行かねえと絶品A定食が売り切れるからよ」
と、さっさと歩き出したのだった。
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