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異邦人の庭 〜secret garden〜
第4章 ミス・アリスと午後のお茶を…
隼人に連れていかれたのは、大学近くの小さな定食屋だった。
カウンターが五席、テーブルが三つだけのこじんまりとした店だった。

「はまなす亭」と店名が白抜きされた年季の入った藍色の暖簾を潜ると威勢のいい声が飛んだ。
「いらっしゃいませ!
ああ、隼ちゃん。いらっしゃい。
…あらあら、今日はどうしたの?すっごい可愛い女の子連れて…。
もしかして…やっと彼女ができたのかい?」
カウンターから顔を出した太った女将らしきひとがにこにこと笑う。

「ちげーよ、サークルに勧誘してる一年生だわ。
おばちゃん、ここ座るよ」
勝手に窓際のテーブル席にどさりと座る。
釣られて紗耶も向かい側におずおずと腰を下ろした。
「…失礼いたします…」
隼人はくすりと笑った。
「あんたってほんとにお上品だな。
…で?何にする?
俺はA定食」
勝手にカウンターの給水器から水を汲み、紗耶の前にも置く。
「…A定食って、何ですか?」
「特製ホルモン焼き定食。ここのホルモン、すげ〜美味いんだ」
「…ホル…モン…ですか…」
…ホルモンと言うからには臓物料理なのだろう。
紗耶は今まで食べたことがない。
紫織は偏食気味で食が細い紗耶に、変わったものは決して食べさせてこなかったからだ。
「お嬢様はホルモンなんか食ったことないか。
じゃあ騙されたと思って食ってみな。
美味くてマジびっくりするから」
隼人の笑顔が太陽のように明るくて、紗耶は思わず頷いていた。

「じゃあ決まり。
おばちゃん!A定食二つね」
声をかけると、カウンターの中から
「はいよ!」
と元気な声が返ってきた。

オーダーが済むと一息つく余裕が生まれ、紗耶は改めて目の前の青年、大嶋隼人をまじまじと見つめた。

…黒いキャップを取った髪は短めにきちんと刈り込まれている。
綺麗に焼けた小麦色の肌、太い眉はきりりとしていて、その下の切れ長のやや釣り上がった目元とともに若者らしい闊達さに満ちていた。
鼻筋は高く通っていて、唇は意志的に結ばれている。

白い流行りの大きめのビッグTシャツにブラックジーンズと言ったシンプルな格好が伸びやかで大柄な体躯によく似合っていた。

雑な物言いや、強引な誘い文句もさして気にならなかったのは、この青年から漂う清潔感や知性、そして自然体の自信…それからさりげなく醸し出される優しさのせいかもしれない…と、紗耶は思った。







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