この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
異邦人の庭 〜secret garden〜
第4章 ミス・アリスと午後のお茶を…
結局、隼人は紗耶を松濤の家まで送ってくれた。
「大丈夫です。
乗り換えなしですから、一人で帰れます」
紗耶は何度も固辞したのだが、隼人が
「もう夕方だろ。
井の頭線、めっちゃ混むし最近痴漢が多いんだ。
新入生狙いの。
お嬢様に痴漢に合わすわけにはいかねえだろ」
と、頑として譲らなかったのだ。
高遠家の屋敷に着くまでには、鬱蒼と繁った林を抜けなくてはならない。
その道すがら隼人は
「…おい、この林…本当に紗耶の家の私有地なのか?」
と面食らったように尋ねた。
「…ええ…。
…あの…ご本家の敷地は広いのです。
明治時代から変わってないそうなので…」
「ん?ご本家って、どういう意味だ?」
…そうして、青銅の門扉の奥に聳え立つ煉瓦造りの瀟洒な歴史的建物を眼にした瞬間、唖然としたように叫んだ。
「…マジか…!
紗耶…お前んち、マジでヤベェ金持ちだな」
「…いえ、あの…ここは…」
何と説明しようかと言い淀んでいると、隼人は門扉に刻まれた表札に気づいた。
「…高…遠…?
紗耶、お前は二宮だよな?
なんで高遠って家に住んでいるんだ?」
隼人に訝しげに尋ねられ
「…あの…実は…」
意を決して、紗耶が口を開いた時…
重厚な門扉が、音もなくゆっくりと開いた。
「…それはね、紗耶は私の婚約者だからですよ」
…低音のよく通る艶めいた声が、静かに響き渡る。
どきりとして振り返る。
「千晴お兄ちゃま…!」
千晴が和かな笑みを湛え、二人の前に現れたのだった。
「大丈夫です。
乗り換えなしですから、一人で帰れます」
紗耶は何度も固辞したのだが、隼人が
「もう夕方だろ。
井の頭線、めっちゃ混むし最近痴漢が多いんだ。
新入生狙いの。
お嬢様に痴漢に合わすわけにはいかねえだろ」
と、頑として譲らなかったのだ。
高遠家の屋敷に着くまでには、鬱蒼と繁った林を抜けなくてはならない。
その道すがら隼人は
「…おい、この林…本当に紗耶の家の私有地なのか?」
と面食らったように尋ねた。
「…ええ…。
…あの…ご本家の敷地は広いのです。
明治時代から変わってないそうなので…」
「ん?ご本家って、どういう意味だ?」
…そうして、青銅の門扉の奥に聳え立つ煉瓦造りの瀟洒な歴史的建物を眼にした瞬間、唖然としたように叫んだ。
「…マジか…!
紗耶…お前んち、マジでヤベェ金持ちだな」
「…いえ、あの…ここは…」
何と説明しようかと言い淀んでいると、隼人は門扉に刻まれた表札に気づいた。
「…高…遠…?
紗耶、お前は二宮だよな?
なんで高遠って家に住んでいるんだ?」
隼人に訝しげに尋ねられ
「…あの…実は…」
意を決して、紗耶が口を開いた時…
重厚な門扉が、音もなくゆっくりと開いた。
「…それはね、紗耶は私の婚約者だからですよ」
…低音のよく通る艶めいた声が、静かに響き渡る。
どきりとして振り返る。
「千晴お兄ちゃま…!」
千晴が和かな笑みを湛え、二人の前に現れたのだった。