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異邦人の庭 〜secret garden〜
第4章 ミス・アリスと午後のお茶を…
「紗耶ちゃん、お帰り。
遅かったね。心配していたんだよ。
知らせてくれたら迎えに行ったのに」
甘く優しい声と眼差しで歩み寄り、千晴は紗耶の髪を撫でようとする。
隼人の眼差しが険しくなる。
「あ、あの…!千晴お兄ちゃま。
私ね、隼人先輩に送っていただいたの」
「隼人先輩?」
千晴は…ああ…と、瞳を巡らせた。
そうして隼人を見ると、魅力的な瞳で穏やかに微笑んだ。
「紗耶ちゃん。彼を紹介してもらえるかな?」
「こちらは大嶋隼人先輩。
私、先輩の弦楽サークルに入部しようと思っているの。
今日、色々お話を伺って…すごく楽しそうなサークルなの。
それで、そのサークルでまたヴァイオリンを弾いてみたいな…て思ったの」
「…それはそれは…。
初日に良いサークルに巡り会えて良かったね。
…初めまして。高遠千晴です。
星南学院大学で教員をしております。
今日は紗耶がお世話になりました。
わざわざ送っていただいて…」
握手を求める千晴に、隼人はやや硬い表情で右手を差し出した。
「大嶋隼人です。
M大の二年生です。
…あの…さっき婚約者…て仰いましたか?」
千晴は朗らかに笑った。
「ええ。紗耶は私の婚約者です。
私と紗耶は親戚関係なのですが、結婚を前提にこの家に同居して貰っています。
新たに大学生活も始まり、心配していたのです。
…大学にちゃんと馴染めるか…あるいは…」
言葉を切り眼を細め、隼人を見つめる。
「…悪い虫がつかないか…とかね」
隼人が不快そうに凛々しい眉を顰めた。
「どういう意味ですか?それ」
千晴の端正な唇が、アルカイックスマイルの形に綻ぶ。
「…深い意味はありません。
紗耶は世間知らずで純粋培養なのです。
単なる私の杞憂でしょう。
…貴方のように親切な方にサークルの勧誘をしていただけて良かった」
そう言うと紗耶の肩を愛おしげに抱き寄せた。
千晴の大きな手の中で、華奢な肩がびくりと震える。
「よろしければご一緒にお茶を召し上がりませんか?
庭の薔薇がそれは見事なのですよ。
…特にミス・アリスが…。私たちだけで見るのは惜しいほどに」
「いいえ。結構です」
優しげな誘いを隼人はきっぱりと断った。
「失礼します」
無愛想だがきちんと挨拶すると千晴に背を向け…しかしすぐに振り返り
「じゃあな。明日部室で待ってるぞ。紗耶」
と笑いかけ、毅然と去っていったのだ。
遅かったね。心配していたんだよ。
知らせてくれたら迎えに行ったのに」
甘く優しい声と眼差しで歩み寄り、千晴は紗耶の髪を撫でようとする。
隼人の眼差しが険しくなる。
「あ、あの…!千晴お兄ちゃま。
私ね、隼人先輩に送っていただいたの」
「隼人先輩?」
千晴は…ああ…と、瞳を巡らせた。
そうして隼人を見ると、魅力的な瞳で穏やかに微笑んだ。
「紗耶ちゃん。彼を紹介してもらえるかな?」
「こちらは大嶋隼人先輩。
私、先輩の弦楽サークルに入部しようと思っているの。
今日、色々お話を伺って…すごく楽しそうなサークルなの。
それで、そのサークルでまたヴァイオリンを弾いてみたいな…て思ったの」
「…それはそれは…。
初日に良いサークルに巡り会えて良かったね。
…初めまして。高遠千晴です。
星南学院大学で教員をしております。
今日は紗耶がお世話になりました。
わざわざ送っていただいて…」
握手を求める千晴に、隼人はやや硬い表情で右手を差し出した。
「大嶋隼人です。
M大の二年生です。
…あの…さっき婚約者…て仰いましたか?」
千晴は朗らかに笑った。
「ええ。紗耶は私の婚約者です。
私と紗耶は親戚関係なのですが、結婚を前提にこの家に同居して貰っています。
新たに大学生活も始まり、心配していたのです。
…大学にちゃんと馴染めるか…あるいは…」
言葉を切り眼を細め、隼人を見つめる。
「…悪い虫がつかないか…とかね」
隼人が不快そうに凛々しい眉を顰めた。
「どういう意味ですか?それ」
千晴の端正な唇が、アルカイックスマイルの形に綻ぶ。
「…深い意味はありません。
紗耶は世間知らずで純粋培養なのです。
単なる私の杞憂でしょう。
…貴方のように親切な方にサークルの勧誘をしていただけて良かった」
そう言うと紗耶の肩を愛おしげに抱き寄せた。
千晴の大きな手の中で、華奢な肩がびくりと震える。
「よろしければご一緒にお茶を召し上がりませんか?
庭の薔薇がそれは見事なのですよ。
…特にミス・アリスが…。私たちだけで見るのは惜しいほどに」
「いいえ。結構です」
優しげな誘いを隼人はきっぱりと断った。
「失礼します」
無愛想だがきちんと挨拶すると千晴に背を向け…しかしすぐに振り返り
「じゃあな。明日部室で待ってるぞ。紗耶」
と笑いかけ、毅然と去っていったのだ。