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異邦人の庭 〜secret garden〜
第4章 ミス・アリスと午後のお茶を…
隼人の姿が見えなくなると、千晴は荒々しく紗耶の手を掴んだ。
「おいで、紗耶ちゃん」
短い言葉はとても無機質で、感情が掴めない。
ただ、握りしめられた手に痛いほどに力が込められる。
ひんやりとした千晴の大きな手は、やや熱を帯びていた。

「お兄ちゃま…?ど、どうなさったの?」
千晴の返答は、ない。
紗耶は激しく動揺する。
…こんな風に紗耶の了承も得ず、強引に千晴に手を取られることなど初めてだったからだ。
そのままやや乱暴に手を引っぱられ、広い玄関ホールを走り抜けた。
大理石の床に、忙しない足音が響き渡る。

そのまま強い力で手を引かれたまま、大階段脇の小客間に引き込まれる。
音を立てて扉が閉められるとそのまま、紗耶は壁に押し付けられた。
…こんなにも近くで千晴と接近したのは初めてだ。

紗耶は生まれて初めて、大人の男に押さえつけられるという経験をした。
そうして、千晴の瞳の色が、やや鳶色がかっていることを知るのだ。
…こんな場面で。


「紗耶ちゃん。
何であの男の子は紗耶ちゃんを呼び捨てにしているの?」
言葉は優しいが、その眼差しは滾るような憤りの色さえ浮かんでいた。

「…え?」
なぜ千晴がそんなことで怒っているのが理解できない。

「僕でさえ、まだ紗耶ちゃんを呼び捨てにしていないのに…」

…紗耶…!

千晴の唇がくぐもった声で紗耶の名前を呼び…その大きな手が紗耶の身体を強く抱きしめた。


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