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異邦人の庭 〜secret garden〜
第5章 ペニー・レーンの片想い
「清瀧とは中等部からずっと同じクラスだったんだ。
馬術部も一緒だったから、一番仲良しの友人だったよ」
勧められたソファに座り、千晴が砕けた口調で紗耶に説明する。
「高遠は昔からどこか近寄り難い一種独特な雰囲気と存在感があってね…。
成績は優秀、スポーツも何をやらせても上手い、人付き合いもそつなくこなす、人当たりも優しい…。
完璧な人間だったな。
加えてこの飛び抜けた美貌だろう?
とても目立った特別な存在だったよ」
そんな風に言う清瀧自身も、端正な貌立ちと理知的さと優雅さが同居する…如何にも育ちの良い雰囲気を漂わせていた。
…二人は兄弟のようにとても似ているのだ。
「何も出ないよ。
…もしかして、紗耶ちゃんの前で僕のお株を上げようとしてくれてる?」
陽気に笑う千晴は、如何にも寛いでいて楽し気だ。
「いやいや、僕は正直な人間だからね。嘘はつけない。
僕が語る高遠はすべて真実ですよ、紗耶さん。
どうぞご安心を…」
織部のどっしりしたマグカップに淹れたダージリンを手渡してくれながら、清瀧が微笑んだ。
「…ありがとうございます…」
千晴の友人とは言え、紗耶にとって清瀧は大学の先生だ。
やや緊張しながら礼を言う。
「新婚生活はどう?
…あの写真のひとが澄佳さん?
本当に綺麗なひとだね」
千晴の視線の先には、デスクに飾られた写真立てがあった。
…見事な古典柄の黒振袖を身に纏った美しい花嫁…。
清瀧の新婚の妻なのだろう。
幸せ一杯の笑顔が、彼女の美貌を更に輝かせていた。
「…ああ、そうだよ。
彼女の実家でこじんまりとした式を挙げさせてもらってね…。
…この黒振袖は、義母が嫁ぐ際に身に付けていたもので…彼女に譲り渡してくれたんだ」
…しみじみと、どこか感慨深いような口調であった。
「清瀧は週末婚なんだよ、紗耶ちゃん」
「…週末…婚?」
向かい側のソファに腰掛けながら、清瀧が頷いた。
「澄佳さんは実家のある千葉の海の町で食堂を経営していてね。
それは彼女の生き甲斐だから、僕が週末に通っているんだ」
…でも…
と、やや照れたように髪を掻き上げた。
「…そろそろ週末だけでは足りなくなるかな…。
色々と心配でね…」
察しの良い千晴が
「…もしかして、奥さん…?」
と尋ねると
「予定日は十月だ。
ようやく安定期に入った」
清瀧は、端整な貌を嬉しそうに綻ばせた。
馬術部も一緒だったから、一番仲良しの友人だったよ」
勧められたソファに座り、千晴が砕けた口調で紗耶に説明する。
「高遠は昔からどこか近寄り難い一種独特な雰囲気と存在感があってね…。
成績は優秀、スポーツも何をやらせても上手い、人付き合いもそつなくこなす、人当たりも優しい…。
完璧な人間だったな。
加えてこの飛び抜けた美貌だろう?
とても目立った特別な存在だったよ」
そんな風に言う清瀧自身も、端正な貌立ちと理知的さと優雅さが同居する…如何にも育ちの良い雰囲気を漂わせていた。
…二人は兄弟のようにとても似ているのだ。
「何も出ないよ。
…もしかして、紗耶ちゃんの前で僕のお株を上げようとしてくれてる?」
陽気に笑う千晴は、如何にも寛いでいて楽し気だ。
「いやいや、僕は正直な人間だからね。嘘はつけない。
僕が語る高遠はすべて真実ですよ、紗耶さん。
どうぞご安心を…」
織部のどっしりしたマグカップに淹れたダージリンを手渡してくれながら、清瀧が微笑んだ。
「…ありがとうございます…」
千晴の友人とは言え、紗耶にとって清瀧は大学の先生だ。
やや緊張しながら礼を言う。
「新婚生活はどう?
…あの写真のひとが澄佳さん?
本当に綺麗なひとだね」
千晴の視線の先には、デスクに飾られた写真立てがあった。
…見事な古典柄の黒振袖を身に纏った美しい花嫁…。
清瀧の新婚の妻なのだろう。
幸せ一杯の笑顔が、彼女の美貌を更に輝かせていた。
「…ああ、そうだよ。
彼女の実家でこじんまりとした式を挙げさせてもらってね…。
…この黒振袖は、義母が嫁ぐ際に身に付けていたもので…彼女に譲り渡してくれたんだ」
…しみじみと、どこか感慨深いような口調であった。
「清瀧は週末婚なんだよ、紗耶ちゃん」
「…週末…婚?」
向かい側のソファに腰掛けながら、清瀧が頷いた。
「澄佳さんは実家のある千葉の海の町で食堂を経営していてね。
それは彼女の生き甲斐だから、僕が週末に通っているんだ」
…でも…
と、やや照れたように髪を掻き上げた。
「…そろそろ週末だけでは足りなくなるかな…。
色々と心配でね…」
察しの良い千晴が
「…もしかして、奥さん…?」
と尋ねると
「予定日は十月だ。
ようやく安定期に入った」
清瀧は、端整な貌を嬉しそうに綻ばせた。