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異邦人の庭 〜secret garden〜
第5章 ペニー・レーンの片想い
サークルの部室は、すぐに見つかった。

ドアの入り口には「penny lane」とやや乱暴な字の手書きのプレートが掛かっていたのだ。

「…ここ…だよね…」
髪を直し、どきどきしながらノックをする。

…中に人の気配はあるのに返事はない。

「…ごめんください…」
恐る恐る声を掛け、ドアを開く。

…すると…


「おい!小宮!昨日の賭け麻雀の金、払えよ」
「ちょい待ってくれ〜。
俺さあ、今月金欠病が激しいんだわ。
来月バイト代入るまで待ってくんない〜?」
「だったら麻雀なんかすんなつ〜の!
ったく…しょ〜がね〜な〜」
「ちょっと!あんた!あたしのタオル使わないでよ!汚い!」
「うっせ〜、ブ〜ス!
タオルくらいケチケチすんな…イテッ!
殴ることね〜だろうがよ!」
「一度死ね!ドアホが!」

…中は、まさしくカオスであった…。

狭い部室には紗耶が理解できない言葉が喧しく飛び交っている。
禁煙!と張り紙が貼られているのに窓辺に座り、咥え煙草で激しくギターを掻き鳴らす者、黙々とチェロの調律をする者、トランプをしながらカップ麺を啜る者…。

茫然と立ち竦んでいる紗耶に気づいたひょろりと背の高い丸メガネの青年が声を掛ける。

「あれれ?一年生のお嬢ちゃんかな〜?
オーケストラ部は隣だよ。間違えちゃったかな〜?」

我に帰り、慌てて首を振る。

「い、いいえ。あの…私、こちらに入部させていただこうと思ってまいりました…」

部室の一同が、一斉に振り向く。

「ええ〜!?」
異口同音の野太い声が上がる。

「マジかマジか!」
「おいおい!ドッキリカメラじゃね〜だろ〜な⁈」
「いやいや、やっぱオケ部と勘違いしてんじゃね〜の?
こんなお姫様みたいな女子…。
お前、聞けよ」
「なんでだよ。お前が聞け」

…小競り合いの背後から、聞き覚えのある声が響いた。

「あ、その子マジだから。
俺が昨日勧誘したの」
「え〜⁈隼人が〜⁈」
またもや異口同音の雄叫びが上がる。

奥のソファをひょいと乗り越え、隼人が紗耶の前に現れた。

「隼人…先輩…!」
ほっとする紗耶に、隼人が眩しげに瞬きをした。
「よく来たな、紗耶」

…そして…

「ようこそ。ペニーレーンへ」
そう言って、真夏の太陽のように笑ったのだ。


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