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リップ・エレクト【完結】
第3章 困った症状💖
この女とも約束…



「サヤカ…。悪い」


予想外の言葉をかけてもらったサヤカへも、今のトシヤには、蚊のなくようなボリュームでこんな歯切れの悪いフレーズを絞り出すのがやっとだった…。


ホテルに入る前、トシヤは女上司の中原アキとレジェンヌPTが立ちあがる直前に寝たことを話していた。
そして、最初の約束と再度の約束のことも…。


サヤカには、そこまで告白されれば、今謹慎中の彼が実際、どんな心理状態に置かれてるかが手に取るように伝わったのだ。
加えて、なぜ傷心の夜の相手が自分だったのかということも…。
無論、それは自分がたらこ唇だからということ以外で。


***


「私さ…、トシヤにはそのリップ、ぜひ成功させてもらいたいよ。…なぜか、すごくそんな気持ちになったわ。たぶん、それってアンタの童心が伝わったからかもね」


ホテルへ移動する電車の中で、サヤカがふと口にしたトシヤから醸される”童心”…。
彼は割り切った気の合うセフレのオンナに、心の芯を鷲掴みにされた衝撃に襲われた。
だが、それは何とも鮮烈な感覚を伴っていたのだ。


「ハハハ…、だって面白いじゃん!単純にエレクト・リップと、そそる年上女上司との二度目をアタマにこびりつかせたオトコの手掛けたリップがよ…、テレビとかのCMに乗ってヒット商品になったら…。頑張ってよ、”今回”をバネにしてさ」


「ありがとな…。何とかこの5日でマインドチェンジしてみるよ。でさ…、サヤカにこのリップのテレビCM見てもらえるように頑張るわ」


「うん、応援してるからさ(笑顔)」



***


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