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飛べないあの子
第2章 揺らぐ影
響が何かを言いたいけど、我慢しているような、うずうずしたような表情で凛を見た。

「でね!?」
「うん」
「そのー・・・・・好きとか言われてないんだけど、押しがすごいっていうか・・・・・・。思ったより優しいし、まあまあ、顔もかっこいいし・・・・・・。でも、なんか高校の時の印象がやっぱり抜けなくて・・・・・・。どう思う!?」
「どうって・・・・・・。わからないよ。そんなの」

響の目を見る。背中を押して欲しいと思ってるのが伝わる。
『城田くんも大人になって変わったんだよ。いいんじゃない?』とでも言ってほしいのだ。
凛は心の中でため息をついて、響が言って欲しいであろうことを言った。

「でも、あの頃はまだ子どもだったし・・・・・・・。今は大人になって、いろんなことを知って丸くなったんだよ。きっと。だから、今の・・・・・・」

胸がチクリと傷んで、凛は一瞬言葉を止めた。

「今の、彼のことを見てあげたらいいんじゃない?」

響が照れ笑いする。

「そう思う?そっかー。そうだよね。もう大人だもんね。あの頃とは違うよね」

凛は内心居心地悪かった。
リーダー格だった慧と今同じ職場であることが言えないもどかしさと、自分の中では慧も城田も未だにあの頃の印象のままのくせに、矛盾したアドバイスをしているからだった。

「そういえばさ。西辻って東大中退したんだって!」

凛はドキリとして思わず黙りこんでしまった。

「あれ?驚かないね。ほんと、凛はドライだなぁ」
「ううん。むしろ・・・・・・驚きすぎちゃって、言葉が出なかった」

凛はかすかに苦笑いして誤魔化した。

「だよね!?勝手に大学辞めて、実家から勘当されたんだって。今は何してるかわからないって城田が言ってた。もうさ、うちの親もだけど、完全に政治家になると思ってたじゃない?ほんとびっくりした」

(勘当・・・・・・・・・)

「でもさ、ちょっと良い気味だよね。ざまーみろって感じ」
「・・・・・・・え?」

凛は今度は本当に驚いて聞き返した。

「あの俺様が一番!て感じで自分以外を見下してたような男がさ、落ちこぼれになったかと思うと、すっきりしない?」

「・・・・・・・・・・」

(落ちこぼれ・・・・?ざまーみろ・・・・・・?)
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