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飛べないあの子
第2章 揺らぐ影
スーパーを出て慧を探す。
慧はもう随分先まで歩いてしまっていた。
凛はワインを抱えて走った。
「西辻先生・・・・・・・!」
慧がすぐに振り向く。
凛は息を乱しながらワインが入っている紙袋を持ちあげた。
「あの・・・・・・これ・・・・・・・・」
「・・・・・・・・どうしたんです?」
慧は驚いた顔をして凛を見た。
凛は少し緊張して、コク・・・・・と唾を飲み込んだ。
「お礼です。あの時の。あの、橋本くんとの」
凛はズイ・・・・・と慧の前にワインを差し出した。
「あの時はありがとうございました。お礼、遅くなってごめんなさい」
頭を下げて、心から謝った。
「・・・・・・・・」
慧はワインを受け取った。
「驚いたな・・・・・・。あなたは俺のこと死ぬほど嫌いだと思ってたから」
「‘死ぬほど’とは言ってないです・・・・・・・」
慧がクスっと笑って言った。
「嬉しいです。遠慮なくいただきます」
凛は受け取ってもらって内心ホッとした。
「それから・・・・・・・。ずっと失礼な態度を取ってしまって、ごめんなさい。西辻先生がおっしゃったように、西辻先生のこと良く知りもしないのに周りの印象で決めつけてました。先生にしたら私なんか完全に初対面の人間なのに、いきなり拒絶されて頭にきましたよね。本当にごめんなさい」
「・・・・・・・・・」
凛はもう一度頭を下げた。
今さら何をと罵られる覚悟だった。
慧はしばらくの沈黙の後、口を開いた。
「俺の方こそ・・・・・・・。あの時はすみませんでした」
凛は驚いて慧を見上げた。
慧が誰かに謝罪するなんてことを想像したことがなかったからだ。
「あの後、ものすごく自己嫌悪に陥って。あれじゃあ、あの生徒と同じだ。あなたを脅して、自分の想い通りにしようとしたんだから。ずっと謝りたかったけど、しばらくはあなたに近づかない方がいいと思って。本当に申し訳なかったです」
あまりに素直に謝るので、凛は呆気に取られた。
世の中の全ての人を見下しているような目をした少年の面影はどこにもなかった。
本当に別人なのではないかと困惑してしまう。
「いえ・・・・・・。あの、確かにあの時は頭にきちゃって・・・・・・。でも、もういいです。もう忘れましょう」
慧は黙ったまま凛を見つめていた。
沈黙が気まずく、凛は慧から目を反らした。
慧はもう随分先まで歩いてしまっていた。
凛はワインを抱えて走った。
「西辻先生・・・・・・・!」
慧がすぐに振り向く。
凛は息を乱しながらワインが入っている紙袋を持ちあげた。
「あの・・・・・・これ・・・・・・・・」
「・・・・・・・・どうしたんです?」
慧は驚いた顔をして凛を見た。
凛は少し緊張して、コク・・・・・と唾を飲み込んだ。
「お礼です。あの時の。あの、橋本くんとの」
凛はズイ・・・・・と慧の前にワインを差し出した。
「あの時はありがとうございました。お礼、遅くなってごめんなさい」
頭を下げて、心から謝った。
「・・・・・・・・」
慧はワインを受け取った。
「驚いたな・・・・・・。あなたは俺のこと死ぬほど嫌いだと思ってたから」
「‘死ぬほど’とは言ってないです・・・・・・・」
慧がクスっと笑って言った。
「嬉しいです。遠慮なくいただきます」
凛は受け取ってもらって内心ホッとした。
「それから・・・・・・・。ずっと失礼な態度を取ってしまって、ごめんなさい。西辻先生がおっしゃったように、西辻先生のこと良く知りもしないのに周りの印象で決めつけてました。先生にしたら私なんか完全に初対面の人間なのに、いきなり拒絶されて頭にきましたよね。本当にごめんなさい」
「・・・・・・・・・」
凛はもう一度頭を下げた。
今さら何をと罵られる覚悟だった。
慧はしばらくの沈黙の後、口を開いた。
「俺の方こそ・・・・・・・。あの時はすみませんでした」
凛は驚いて慧を見上げた。
慧が誰かに謝罪するなんてことを想像したことがなかったからだ。
「あの後、ものすごく自己嫌悪に陥って。あれじゃあ、あの生徒と同じだ。あなたを脅して、自分の想い通りにしようとしたんだから。ずっと謝りたかったけど、しばらくはあなたに近づかない方がいいと思って。本当に申し訳なかったです」
あまりに素直に謝るので、凛は呆気に取られた。
世の中の全ての人を見下しているような目をした少年の面影はどこにもなかった。
本当に別人なのではないかと困惑してしまう。
「いえ・・・・・・。あの、確かにあの時は頭にきちゃって・・・・・・。でも、もういいです。もう忘れましょう」
慧は黙ったまま凛を見つめていた。
沈黙が気まずく、凛は慧から目を反らした。