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飛べないあの子
第3章 届きそうな距離
「中谷先生って渋いですよね!『カクテルしか飲めません~』とか言ってる女子いるじゃない?日本酒の一升瓶口に突っ込みたくなるわ」
「えー?私カクテルしか飲めません~」

慧の隣に座っている優菜がわざとブリッ子な声を出して言った。

「よっしゃ!中谷先生!一升瓶持ってきて!」
「ビール瓶しかありませんね」
「それでよし!」
「きゃー!」

麻子が本気で優菜の口にビール瓶を突っ込もうとしている。
凛は久しぶりに声を上げて笑った。
料理は麻子が勝手にあれこれ頼み、あっという間にテーブルは料理とグラスでいっぱいになった。

「中谷先生って、変わってますよねえ。可愛いのに、その可愛いさ全然売りにしていないし。媚びた表情とかしないですもんね。てか、お酒飲んでもあまり表情変わらないですよね」

優菜が凛をじーっと見つめながら言った。

「はあ。でも、顔に出なくても酔っぱらってますよ」
「何か変化が起きます?」
「酔いが進むと、急にベラベラ話だします」
「そうなんだ~。乃木先生、ベラベラ話す中谷先生見たことあります?」

優菜が麻子に尋ねた。麻子がニコニコしながら頷いた。

「一生懸命話してくれる中谷先生、可愛いよ~?なんか、幼稚園くらいの子がお母さんや先生に聞いて聞いて!って話してくる感じに似てる」
「へ~!見てみたい!西辻先生も見てみたいですよね!?」
「見たいですね」

慧が即答する。
優菜が凛のグラスをグイグイと押しつける。

「いやいや、明日も仕事ですし今日は控えめで・・・・・・」

凛はグラスを受け取って、少し離れた場所に置いた。

「は~。私も中谷先生みたいに落ち着いた大人のキャラ目指そうかなぁ」

優菜がため息を吐きながら言った。

「そういうの、目指してなれるものじゃないんじゃない?芦屋先生は、熱いところが売りなんだから、そのままでいいのよ」

麻子がなだめるように優しく語りかける。
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