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飛べないあの子
第3章 届きそうな距離
「その・・・・・友達と温泉に行った時に。伊豆で」
「そこでナンパされたんですよね」

優菜がニヤニヤと笑いながら言った。

「ナンパ・・・・・・・・。まあ、一緒に卓球やろう、みたいな感じですかね」
「中谷先生って、そういう人とかめっちゃ警戒しそうなのに意外ですよね」
「・・・・・・・その時は、旅の恥はかきすてといいますか、酔った勢いといいますか」
「・・・・・・・・・・」

みんなが突然黙ったので、凛はみんなを見渡した。
女性二人は驚いたような顔をして、慧は怒ったような顔をしているのを見て凛は慌てた。

「違いますよ?酔った勢いで連絡先を交換しただけです」

それを聞いて麻子が苦笑した。

「ですよね~。一瞬良からぬ想像が」

慧の目がよりいっそう冷ややかに見えて、凛は気まずさを散らすように話題を自分から反らした。

「みなさんは、どうですか?」

麻子も優菜も全然~と言って首を振った。

「西辻先生って、彼女いるんですか?」

優菜がここぞとばかりに慧に尋ねる。

「いいえ。いません」
「先生って東大の女子と付き合ったことあるの?」

麻子も興味津々の様子で身を乗り出した。

「まあ・・・・・・ありますね」
「才女と付き合うってどうなんですか?」
「色々と面倒でしたけどね・・・・・・。志が高いのは良いことでしょうけど、相手に求めるもののレベルも高くて。俺が知り合った人がそういうタイプが多かっただけかもしれませんけど」

凛は慧が高校生の頃、どんな子とつきあっていたっけと思いだそうとしたが、無理だった。
いつもまわりに女の子はいた。みんな可愛くて頭が良くて、裕福で・・・・・・。
選ばれた女子たちだった気がする。もちろん、凛のような無愛想な子は一人としておらず、表情豊かな女の子らしい子たちだった。

「彼女欲しくないんですか?」
「欲しいですよ」
「じゃあじゃあ、コンパ!しましょうよ!」

優菜が待ってました!という様子で勢い良く言った。
優菜以外のメンバーがえっという顔になる。
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