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飛べないあの子
第3章 届きそうな距離
「東大つながりのお友達、呼べませんか?同級生でも先輩でも後輩でもいいので!私、ジムで仲良くなった若い子に声かけます!」
「ちょっとちょっと、私と中谷先生は無視!?」

麻子が、待って待ってと手を差し出した。

「中谷先生はコンパなんか行かなくても出会いがあるだろうし、乃木先生は、ほら・・・・・・ねえ?ジェネレーションが」
「ひどい!だからこそ焦ってるのに!芦屋先生だって、年取ったらわかりますよ!」
「だからそうなる前に見つけたいんです!」

凛は、苦笑いして喧嘩する二人を見た。

コツン。

つま先に何かが当たってハッとする。
見上げると慧がこちらを見ていた。

「中谷先生、コンパ行きたいですか?」

声が若干冷ややかな気がしてギクリとする。

(これは・・・・・・・どっちが正解だろう・・・・・。あなたも来なさいよってこと?)

「えっと・・・・・・・。行きたい、です?」

慧の視線が鋭くなる。

(あ、間違えたみたい)

「中谷先生も行きますか?じゃあ、4対4で西辻先生お願いします!」

優菜が慧に向かってはしゃいで言った。

「・・・・・・・わかりました。ちょっとあたってみます」
「よろしくお願いします!!」
「でも、忙しい奴らばかりなんで、予定なかなか合わないかもしれないですよ」
「あ、もう全然!一ヵ月でも二ヵ月でも待ちます!」

麻子は完全にすねてしまっていた。
優菜と慧がコンパの候補日について話し合っている隙に、凛は麻子に耳打ちした。

「乃木先生、私、直前でお断りしますから、乃木先生行ってください」
「・・・・・・・いいの!?」
「はい。私、コンパとか苦手なので。せっかくのお酒、美味しく飲めないから」
「中谷先生ありがと~!このお礼は必ず!」
「いいえ。良い出会いがあるといいですね」

麻子がもう一度ありがと~と言って凛をぎゅーっと抱きしめた。

「何を盛り上がってるんですか」

優菜がじとーっと二人を見た。
麻子が誤魔化すようにビールのおかわりを注文する。
久しぶりに楽しい酒の席だった。
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