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飛べないあの子
第1章 再会
大丈夫。彼はきっと私のことを覚えていない。
凛は自分に言い聞かせてトイレを出て自分の席に戻った。
「中谷先生」
座ろうとしたところで名前を呼ばれてハッとする。
「はい」
振り返ると校長と慧が立っていた。
一瞬息が止まる。
「中谷先生、西辻先生に校舎を案内してあげてくれませんか?」
「・・・・・・・・私ですか?」
「はい。先生、西辻先生と同じ年ですし。ね?」
初老の背の低い校長がにこにこと笑みを浮かべながら言った。
選別ポイントについて突っ込みたかったが、凛は黙って立ち上がった。
凛は不自然にならないように頭を下げて挨拶した。
「中谷です。物理を担当してます」
「よろしくお願いします」
「では、こちらへ」
凛は平常心を保とうと必死になった。何かを考えるのは後でにしよう。
今はとにかく案内をさっさと終わらせることだ。
凛は授業を行う教室と、自習室、相談室、談話スペース、給湯室などを機械的に紹介していく。
「中谷先生」
それまで黙って頷くだけだった慧が話かけたので、凛は内心驚いたが表に出さずに足を止めた。
「はい」
「先生はいつもそんな感じなんですか?」
「・・・・・・・と言いますと?」
「ロボットみたい」
(ロボット・・・・・・・・)
「普通、何か雑談も交えながら案内しません?」
慧がクスっと笑った気がして、凛の胸にかすかにチリ・・・・・・と痛みが走る。
「雑談、必要でした?」
「いいえ、別にそういうわけでは」
「では、これで終わりですので職員室に戻りましょう」
凛はそれだけ言うと一人歩き出した。
「中谷先生、もしかしてどこかでお会いしたことあります?」
凛は一瞬足が止まりそうになったが、なんとか立ち止まらず歩き続けた。
振り返らずに呟くように言う。
「いいえ」
凛は背中に向けられた視線から逃げるように階段を上がった。
凛は自分に言い聞かせてトイレを出て自分の席に戻った。
「中谷先生」
座ろうとしたところで名前を呼ばれてハッとする。
「はい」
振り返ると校長と慧が立っていた。
一瞬息が止まる。
「中谷先生、西辻先生に校舎を案内してあげてくれませんか?」
「・・・・・・・・私ですか?」
「はい。先生、西辻先生と同じ年ですし。ね?」
初老の背の低い校長がにこにこと笑みを浮かべながら言った。
選別ポイントについて突っ込みたかったが、凛は黙って立ち上がった。
凛は不自然にならないように頭を下げて挨拶した。
「中谷です。物理を担当してます」
「よろしくお願いします」
「では、こちらへ」
凛は平常心を保とうと必死になった。何かを考えるのは後でにしよう。
今はとにかく案内をさっさと終わらせることだ。
凛は授業を行う教室と、自習室、相談室、談話スペース、給湯室などを機械的に紹介していく。
「中谷先生」
それまで黙って頷くだけだった慧が話かけたので、凛は内心驚いたが表に出さずに足を止めた。
「はい」
「先生はいつもそんな感じなんですか?」
「・・・・・・・と言いますと?」
「ロボットみたい」
(ロボット・・・・・・・・)
「普通、何か雑談も交えながら案内しません?」
慧がクスっと笑った気がして、凛の胸にかすかにチリ・・・・・・と痛みが走る。
「雑談、必要でした?」
「いいえ、別にそういうわけでは」
「では、これで終わりですので職員室に戻りましょう」
凛はそれだけ言うと一人歩き出した。
「中谷先生、もしかしてどこかでお会いしたことあります?」
凛は一瞬足が止まりそうになったが、なんとか立ち止まらず歩き続けた。
振り返らずに呟くように言う。
「いいえ」
凛は背中に向けられた視線から逃げるように階段を上がった。