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飛べないあの子
第1章 再会

西辻慧は高校の同級生だった。
二人は東海地方の中都市にある進学校に通っていた。
頭脳も、容姿も、運動能力も、そして家柄も、何もかもに秀でていて、誰もが彼と懇意になりたがったし、誰もが彼に憧れた。
慧が凛のことを覚えていないのも無理はない。大きな学校だったからだけではない。
凛はいわばヒエラルキーの下層に位置する、慧からみたら雑草か石ころのような存在だからだ。
気に止めるような相手ではなかったからだ。
慧は地元の政治家の息子だった。
慧の取り巻きたちも皆、裕福で優秀な人物ばかりだった。
慧自身は誰かを苛めたり自分から目立つようなことはせず、ただ静かに王座に座っているような印象だった。その静かさを皆が恐れていたように思う。
美しい青年の冷ややかで他人に興味が無いという目は、畏怖の念を抱くのに十分な威力があった。
誰もが慧の視線を気にして、時々発せられる言葉に注目する。
今思えば狭い世界の王様だが、あの頃はその世界が全てだった子どもにしてみれば、脅威を感じる存在だった。
クラスは成績順だったし、凛は同じクラスになったこともない。
凛は存在を消して、彼らと関わらないようにひっそりと生きていた。
慧は東大を卒業して、いずれは政治家になって父の地盤を引き継ぐはずだ。
なぜこんな東京の端の大手でもない予備校に・・・・・・。
凛はそこまで考えて、ため息をついた。
(やめよう・・・・・・・。考えても仕方ないし、彼がどういう事情で予備校講師のアルバイトをしてるかなんて、私には関係ない)
事実、何も関係ないのだ。
凛はテキストを持って立ち上がると、授業へと向かった。
二人は東海地方の中都市にある進学校に通っていた。
頭脳も、容姿も、運動能力も、そして家柄も、何もかもに秀でていて、誰もが彼と懇意になりたがったし、誰もが彼に憧れた。
慧が凛のことを覚えていないのも無理はない。大きな学校だったからだけではない。
凛はいわばヒエラルキーの下層に位置する、慧からみたら雑草か石ころのような存在だからだ。
気に止めるような相手ではなかったからだ。
慧は地元の政治家の息子だった。
慧の取り巻きたちも皆、裕福で優秀な人物ばかりだった。
慧自身は誰かを苛めたり自分から目立つようなことはせず、ただ静かに王座に座っているような印象だった。その静かさを皆が恐れていたように思う。
美しい青年の冷ややかで他人に興味が無いという目は、畏怖の念を抱くのに十分な威力があった。
誰もが慧の視線を気にして、時々発せられる言葉に注目する。
今思えば狭い世界の王様だが、あの頃はその世界が全てだった子どもにしてみれば、脅威を感じる存在だった。
クラスは成績順だったし、凛は同じクラスになったこともない。
凛は存在を消して、彼らと関わらないようにひっそりと生きていた。
慧は東大を卒業して、いずれは政治家になって父の地盤を引き継ぐはずだ。
なぜこんな東京の端の大手でもない予備校に・・・・・・。
凛はそこまで考えて、ため息をついた。
(やめよう・・・・・・・。考えても仕方ないし、彼がどういう事情で予備校講師のアルバイトをしてるかなんて、私には関係ない)
事実、何も関係ないのだ。
凛はテキストを持って立ち上がると、授業へと向かった。

