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飛べないあの子
第3章 届きそうな距離
ブー・ブー・ブー・・・・・・・

朝から母から何度も電話が来ていた。
無視していたが、さすがに何かあったのかと心配になり残業中に外に出て電話をかけ直す。
だいたいこう思ってかけ直しても、どうでも良い話の場合がほとんどなのだが。

「お母さん、今仕事中なんだけど・・・・・・・。緊急の用事?」
「あなた、いっつも電話でないじゃない。今日は出るまでかけようと思って」
「うん。だからかけたよ。何?」
「あなた小学校の同級生の町田くんて覚えてる?」
「町田??覚えてないよ。なんで??っていうか、それ緊急??」

母は無視して続けた。

「町田くんのお母様に昨日スーパーでお会いしてね、国交省にお勤めなんですって!まだ結婚してなくて、お嫁さん探してるっていうのよ。だからね、ぜひうちの娘に紹介していただきたいってお願いしてきたの。あちらさんもぜひって。だからね、再来週の日曜日に会うことになったから」
「待って。会うことになったからって、なんでそういうこと勝手に決めるの?やめてよ。絶対に行かないから」
「何言ってるの!そうこうしてたら、あっというまに三十になっちゃうわよ。二十六にもなってフラフラして。あなたのために頭下げてお願いしたのよ。今さらやめるなんて出来ないわ」
「・・・・・・・フラフラしてなんかない。仕事ちゃんとやってるよ」

母はバカにしたようにせせら笑った。

「予備校勤めなんて、ちゃんとに入らないわよ。まったく、あれだけ教育費かけたのに大学も就職先も失敗して・・・・・・。せめて結婚相手くらいは失敗してほしくないのよ」

胸が大きな石でぎゅうっと押しつぶされた気分になる。

「・・・・・・・とにかく行かないから」

電話を切ってため息をつく。

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