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飛べないあの子
第4章 刻まれるキス
やっぱり無理矢理こじつけただけだ。そもそも、ペンギンは自分を鳥の仲間だと認識してないだろうし、飛びたいと思っているかどうかなんてわからないじゃないか。
そう思うが、ふと、飛べないのに飛ぼうともがいているペンギンの姿が頭に浮かんで、かつて母に言われるがままに一流大学を目指して必死になっていた自分の姿と重なる。
さしずめ慧は鷹か鷲といったところか・・・・・・・。
凛は余計なお世話だと不貞腐れた。

「まあ、今さらお母さんの性格は変わらないんだし、理解してもらおうなんて無理よ。こっちが妥協するか、わかってもらえないの覚悟でひたすら抵抗するしかないって」
「妥協なんかしない。これ以上言うなら本家のおじちゃんに報告するってお母さんに言っておいて」

本家のおじちゃんとは、父の兄で、父が亡くなった後も何かと母を援助してくれている人だった。伯父はいつも凛の味方で、大学に合格した時も就職が決まった時も、偉い偉いと褒めてくれる人だった。

「えー?もう、それなら凛から直接言ってよ。もう私が言ったって何も聞きやしないんだから」
「・・・・・・わかった。ごめんね、巻き込んで。年末帰るから、その時お詫びする。子どもたちのクリスマスプレゼント、何が欲しいかまた教えて」
「毎年悪いね~。あのさ、今年、ちょっと高くなってもいい?」
「いいよ」
「わーい♪ありがとー」

望はご機嫌で電話を切った。
それと同時に母からのメールが来る。

『釣書には私立中学校の教師って書いたから、話合わせておいてね』

凛は最大限にしかめっ面をして、盛大にため息をついた。
職業詐称までして見合い相手に媚を売らせようとするところも、そもそも娘の職業を見下しているところも、うんざりさせられる。

(今日は・・・・・誰かと飲みに行きたい・・・・・・・・)

家で一人で飲んだら、ひたすら母の悪態をつくことになって余計に気持ちが落ちてしまうことが明らかだった。
突然誘っても付き合ってくれそうな大学の友人数名にメッセージを送ってから席に戻った。
誰か一人くらいいるだろうと思っていたが、全員から断られてしまった。
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