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飛べないあの子
第4章 刻まれるキス
「・・・・・・・もともと行きたかったわけじゃないからね。俺の希望の進路は他にあったけど、まあ、中谷さんは良く知ってるとおもうけど、東大に行って政治家になるコースしか父親が許さなかったから」
「でも・・・・・・卒業もしなかったのはなんで?」
「最初は一応卒業するつもりだったよ。でも、在学中に友達と介護系のベンチャー立ち上げて。それが上手いこといって、稼げるようになったから止めた。経済的に自立したら、さっさと家と縁切るつもりだったから」
「三年生まで行ったなら仕事と両立出来たんじゃない?」
「出来ただろうね。でも、最初に言ったように行きたかったところじゃないから時間の無駄かなと思って。まあ、正直言うと親への反抗心もあったね。東大中退とか、あの人たちにしてみたら顔に泥塗られた気分だろうから」

慧の話しぶりからは後悔の様子は感じられなかった。
実家と縁を切るのを覚悟で、自分で道を切り開いたのだ。

「・・・・・・・なんか、すごいね」
「すごい?地元じゃ、落ちこぼれのレッテル貼られてるよ」
「落ちこぼれなんかじゃないよ・・・・・!」

凛は語気を強めて言った。

「西辻君はやっぱりすごいよ。東大は、そんなに簡単に現役で入れるとこじゃないよ。ご家族からのプレッシャーに負けないで合格したんだもん。すごい。その後も、覚悟を持って自分の人生切り開いてて・・・・・・やっぱりすごいよ」

凛は慧の方に体をわずかに向けて続けた。

「・・・・・・・私ね。中学の中ではそこそこ頭良い方だったの。それで私も母も調子に乗ってね。高校でも上位キープするぞなんて意気込んでたら、もう、みんな本当にすごく頭良かったじゃない?私なんて下の下で。私自身はもう自分の実力もはっきり分かってたけど、母は現実受け入れられなくて・・・・・・。現役で一流大に行きなさいが口癖だった」

慧は頬杖ついて凛をじっと見ていた。
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