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飛べないあの子
第4章 刻まれるキス
「わかったよ。今日はもう耳はやめとく。そのかわりその邪魔なクッションどかしてくれる?」
「・・・・・・どかしてどうするの?」
「どうするって・・・・・・。抱きしめたい以外に何かある?」
「~~~~~~ッ」

凛はクッションに突っ伏した。

「・・・・・・積極的すぎだってば~」

慧は笑いながら凛の隣まで移動した。
凛のクッションを引きぬく。

「だって、かすり傷じゃなくて、致命傷になるって言って欲しいし」
「え?」

慧は凛の手を引いて抱きしめた。
こんな風に自分の方を向いて欲しいと思ったこともない。

凛の体からふ・・・・・と力が抜ける。
慧はきゅ、と力を入れて抱きしめた。
前も思ったが、凛の抱き心地がとても良い。
自分の体にとても合っている気がするのだ。
キスもこんなに良いと思える人は中々いないんじゃないかと思う。
さぞかしセックスの相性も良いに違いないという考えが頭をよぎるが、すぐに振り払う。
今までなら間違いなくこの段階でセックスに持ち込むところだが、凛のペースに合わせないと本気で拒絶されてしまうとわかるからだ。それだけは避けたかった。

慧は腕をほどいて凛の両手を掴むと、再びキスした。
今度は優しく、さっきより気持ちを込めてキスする。

凛に対する気持ちは好きと好奇心が拮抗しているような状態だと思っていた。
でも、もしかしたら、好きだと言う言葉を口にすることも自分にとってハードルの高いことなのかもしれないと慧は思う。
凛と比べたら、明らかに興味がない子に対してもさらりと好きだと言ってきた。
でも、凛には軽い気持ちでそれを言うことができない。

気持ちが溢れ出てどうしようもなくなった時は、素直に好きだと告げるつもりだ。
凛にもいつかそうなって欲しい。今はまだそうなるための準備段階だと思って楽しむことにする。

陽が傾いてオレンジ色になった部屋に、ちゅ、ちゅ、とキスの音が響く。

「・・・・・ねえ、せめて週に一回はキスしたいんだけど。じゃないと予備校で襲っちゃいそうになる」
「襲うって・・・・・」
「だって、中谷さん、仕事中は完全に無視するし。ツーンとしてる横顔見ると、両手で顔ホールドしてめちゃくちゃにキスしたくなる」
「絶対やめて」

凛が心底脅えたような顔をしている。

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