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ごっこから何が生まれるのか
第2章 恋人ごっこ。
「恋人っぽく…できていますか…?」
シャワーの音に掻き消され流れていく。
こんなにもドキドキしたりするのは久しぶりで、もちろん今日のような事を好みの彼にされれば嬉しい訳で。だが、「ごっこ」と言われた。それは今後そういった関係にはならないと言われているようで、それを言われるまではこの先あわよくばなんて思っていた自分が恥ずかしい。温度差だ。
次があっただけ良しとしなきゃな。なんて自傷気味に笑いシャワーを止めた。タオルを腰に巻き部屋に向かうと、煙草の香りがする。俺に手招きをし横に座らせれば、用意されていたグラスを渡された。
「時間はまだあるし、ゆっくりで」と
並んで酒を口にしていく。時折彼の肩が触れるとピクリと体を震わせた。俺だけが勝手に意識していると思われても癪だからと、何事もない顔をしてはいた。
「何で文弥はずっと敬語なの?」
クスリと笑いこちらを見つめる。
「何でって、年上だと思ってたからですかね。あとは何となくこの方がしっくりくるんですよ」
嘘は言っていない。違和なんて感じないのだから。
「だから名前も倉敷さんって呼ぶの?」
「まぁ、そうですね。」
「下の名前呼んでもらえない?」
「っ、下の名前ですか?」
「そう、下の名前忘れちゃいました?」
「覚えてますよ」
倉敷健。名前は覚えている。
俺はビールを一気に流し込み
「っ、健さん…っ」と一言だけ発した。
その瞬間口が塞がれた。苦い煙草の味が咥内に広がる。直ぐに侵入してきた舌を追うように舌を絡ませ、貪るように何度も重ねた。口の端から唾液が滴り吐息とも、喘ぎ声とも捉えられる音が漏れ始める。
「んっ、ぁ、ハァ、ぁ…ん」
未だ終わらない口付け。
「た、けるっ…さん、んぁ、ぁ…もっ、もう」
息が続かず苦しくなる彼の肩に手を置き、指先に力を込めた。