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ごっこから何が生まれるのか
第1章 好みの男


「フミちゃん、どうだった昨日の男は?」


俺をフミちゃんと呼ぶのは、ゲイバーのママだ。俺は昨日男と知り合った場所に足を運んでいた。出会いを求めて来た訳じゃない。仕事帰りに一杯飲んでから帰るのが日課なだけ。


「ああ、そうだね。なかなか良かったよ」


「あらあら、久しぶりに見るわねその顔。」


「どんな顔だよ」


「んんっ、そうねこんな顔よ」


そう言われママがいつも使用する手鏡を向けられた。俺なはいつもと変わらない様に見えるのだが


「少し口角があがって、可愛いわ」


手鏡を持ったついでに自分の顔もしっかり確認してから元の場所に戻す。


「ママの方が可愛いよ」


ゲイバーのママと聞くとどんな感じを想像する?
ママはお金をかけているのもあるが、元からなかなかの美人だ。元の写真を見たが元がいい男だった。


「知ってるわよ、なんせお金かかってるからね」


なんて笑いながら鼻筋を指さした。
そう言えば最近鼻筋をどうこうしたって聞いたな。


「って、もう!私の話はいいからっ!」


と、男の話に戻す。
仕草から話し方から、もう女性だ。
そう口に出せばママは喜んでお酒を口に含む。


「昨夜限りでもなんて思ったんだけどね。どうやら次がありそうなんだよ」


昼間のやりとりを見返しながら話した。
ちまちまと酒を口に運び、今では嫌われる煙草を手に取る


「相手から?」


興味深々ですと言うのがよく分かる。
軽く身を乗り出し首を傾げた。


「そうだね、相手からだよ。週末にってさ」


いつ?と聞かれるのが分かっていたからか、俺が聞いて欲しかったのか分からないが、自ら週末だと打ち明ける。
灰皿を新しものに変え、グラスの水滴を綺麗に拭き取り、カウンターに置かれた。


「良かったわね、一緒に店を出た時は私がドキドキしちゃったわよ」


少し膨らみのある胸に手をやり、瞼を閉じている。
まるで女子高生の恋バナってやつみたいに。
それを真似して俺も胸に手をやり、笑って見せた。
グラスを傾け飲みきり店を後にする。


「私も楽しみができちゃった」
と、手を振るママに軽く手をあげて。

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