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ごっこから何が生まれるのか
第2章 恋人ごっこ。


「今更なんですが、名前聞いていいです?」


箸を置き改まって聞かれる。食事も既に半ばで2.3杯は飲んでいる。お互い名前も知らずに「そちらは」なんて言いながら話していた。これも、聞かれるまでは待とうと決めていた事。


「あ、そうですね。お互い名前もまだでしたね」


「俺は倉敷健(くらしきたける)と言います」


「高木文弥(たかぎふみや)です」


お互いの自己紹介をするとおかしくなって、2人で笑った。


「フルネームなんて何か変ですよね」


「本当そうですよ」


相手に釣られてフルネームを言ってしまった。
その後年齢を聞かれ彼の方が3歳年下だと知った。年上にばかり目が行っていたのに、まさかの年下だったとは思いもしなかった。


「正直高木さんは年下だとばかり、可愛いらしいので」


「俺も倉敷さんが年上だとばかり、オーラが」


お互い予想とは違った様だった。
会話は変わり、彼から変わった提案をされた。
それは喜んでいいのか悪いのか分からない、何を思って言った事なのか。



「今日はこれから恋人ごっこしませんか?」


脳内はクエスチョンだらけで、どう返事をしていいのか悩んでいると、それを察したのか彼からまた話が続けられた。


「手を繋いだり、キスをしたり、恋人みたいな事。男同士だと普段はなかなかできないじゃないですか。非日常な事をしたいんですよね」


男前な顔でとてもメルヘンな事を言い出す。





「例えばここ」と机に指をトンとさし

「個室だから誰にも見えませんしね」なんて言われ

「だから隣に」と彼の横のスペースを少し開けられ

「恋人ごっこ、しません?」と目が合えば




俺は彼、倉敷さんの隣に座っていた。


手は彼から繋がれて。





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